上村由紀子(フリーライター)

 NHK朝ドラ100作目の『なつぞら』が絶好調です。

 初回から約2週にわたって主人公・奥原なつの子供時代のエピソードが続き、それがドラマチックかつ子役の粟野咲莉(さり)が非常に巧みだったため、高校生になったなつ=広瀬すずへのシフトも心配されました。しかし、なつが幼なじみに北海道時代を回想し語るという構成を取ったため、そこは難なくクリア。

 かつて「生涯で一番思い入れがある作品」と大河ドラマ『真田丸』について語った草刈正雄も、スタッフの多くが『真田丸』と重なる『なつぞら』の現場で、なつが身を寄せる柴田牧場の牧場主・柴田泰樹(たいじゅ)役として大フィーバー。いかんなく『アルプスの少女ハイジ』のおんじ感を醸し出しつつ、ドラマに深みを与えています。

 広瀬すずは馬を乗りこなし、死にかけている子牛に人工呼吸を施して、山に向かって「教えてー!」と叫ぶなど、十勝に生きる酪農少女を好演。クラスに女子が2人のみという状況の中、もう1人の女子・よっちゃんを牛に見立てて蘇生術を再現するなど、「美少女だから何やっても許されると思ってんじゃねーぞ!」的なキャラクターを楽しそうに演じる姿はとてもチャーミング。

 そんな『なつぞら』の中で、何とも言えない違和感をまとっているのが、柴田牧場の柴田剛男と富士子夫妻。演じているのは藤木直人と松嶋菜々子です。
JALボーイング737型機に特別塗装された「なつぞら」=日本航空羽田格納庫(撮影・矢島康弘)
JALボーイング737型機に特別塗装された「なつぞら」=日本航空羽田格納庫(撮影・矢島康弘)
 もともと剛男となつの実父は戦友で、どちらかが戦死したら残った方が相手の家族を助けようと約束を交わした仲。剛男はその約束を守り、戦災孤児として東京の施設に収容されていたなつを引き取り、十勝へと連れ帰って、家族の一員として育てることに。

 なつには兄と妹がいるはずなのに、どうして剛男はなつ1人を十勝に連れて行ったのか。ドラマの冒頭、そんな疑問を持った視聴者も多いと思うのですが、藤木直人から表出するほわんとした天然感で「あれ、取りあえず見つけた1人だけ確保しちゃった?」と思わずにはいられませんでした。実際は、兄は自分の意志で東京に残り、妹は親戚の家に預けられていたわけですが。

 また、剛男は北海道の家族にも戦友の遺児を連れて帰ると伝えていなかったため、十勝サイドもプチ混乱。ある日突然、戦地から帰ったお父さんが見知らぬ女の子を連れていたら、待っていた家族もそりゃあびっくりしますよね。報告、連絡、相談大事。