田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 令和の時代を迎えた祝賀気分に水を差す国として、韓国が只今のところトップを走っている。多くの国が日本の新時代に祝福の言葉を贈る中で、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の祝電は、天皇陛下に対して「要請」を含めている点でも異例に思えた。

 産経新聞の報道では、「上皇さまと同じように戦争の痛みを記憶しながら、平和へとしっかりした歩みをつないでいかれること」という、どう見ても「上から目線」的なものだった。外交儀礼上の表現としての妥当性は好事家に任せるとして、日本国民の多くには、この祝電はかなり失礼なものに思えただろう。

 メディアによっては、韓国の「祝電」には「天皇」という表現があったことを挙げて、従来の韓国メディアが採用する「日王」ではないので、文政権に日韓関係改善の意思が見えるという解釈があるようだ。だが、もし本当にそうならば、「祝電」披露の瞬間に、日本国民の多くに傲慢(ごうまん)な姿勢と取られたことで、頓挫したといっていいのではないか。

 これは文大統領だけの話だけではない。文喜相(ムン・ヒサン)韓国国会議長の「祝電」には、「どの口で言うか」と単純に驚かされた。「祝電」で、文議長は天皇陛下への訪韓を要請したからである。

 文議長が米メディアのインタビューで、慰安婦問題に関連して譲位前の上皇陛下に「謝罪」を要求し、日韓関係のさらなる悪化に貢献したことを知らない人はいない。天皇陛下の訪韓で何を求めるのか、と文議長に詰問したい気持ちは誰しもあるだろう。

 「ダブル文」をはじめとして、このような「感情」を扇動する政治手法には毎度呆れてしまう。ただ、ダブル文による「感情」を揺さぶる外交手法は、両者がコラボしている可能性すら感じる。
「令和」を迎えた皇居・二重橋付近で中継をする海外メディア=2019年5月1日午前
「令和」を迎えた皇居・二重橋付近で中継をする海外メディア=2019年5月1日午前
 発足から間もなく2年を迎える文政権は、経済失政や北朝鮮に肩入れしすぎて国際的に孤立を深める「外交手腕」など、国内外で追い込まれているように思える。事実、支持率も韓国ギャラップによる4月の世論調査で過去最低を記録し、最新でも不支持率の方が上回っている。

 ただ、調査を分析すると、北朝鮮に肩入れしすぎる外交姿勢も、韓国国内では依然として人気が高い。また、日本への「感情」を揺さぶる手法も、国内的には手堅い支持を集めているようだ。