2019年05月13日 11:31 公開

笑い事で済むことも多いが、関係者を真っ青にさせることもあるスペルミスや誤植。図らずも世間の大きな注目を集めてしまったケースを紹介しよう。

つい先日、オーストラリアの50ドル紙幣にスペルミスが見つかったのを覚えている人は多いだろう。

同国初の女性議員イーディス・カウアンの肖像をあしらったこの紙幣は、背景が芝生に見える。だが実はこの部分、カウアンの演説を非常に細かい文字で記してある。

その格調高い文章の中の、よりによって「責任」を意味する「RESPONSIBILITY」という単語が、「RESPONSIBILTY」になっていたのだ(3つ目のIが抜けていた)。

https://www.instagram.com/p/BxN4PpbBRHj/


この50ドル札は、同国の中央銀行が昨年10月に発行し始めたばかり。だがすでに約4600万枚が世の中に散らばったとされる。

ソーシャルメディアで嘲笑の的となったのは無理もない。

トランプ氏は何を言いたかった?

ツイッターを多用するドナルド・トランプ米大統領は2017年5月、不可解なメッセージを放って何百万人ものフォロワーを困らせた。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/869858333477523458


このツイート、「誰が『covfefe』の真の意味を理解できる??? お楽しみあれ!」といった意味だが、問題はこの「covfefe」なる単語。

どの英語の辞書をめくっても、こんな言葉は見当たらないのだ。

トランプ氏はメディアの厳しい追及を受けてきたことから、どうやら「coverage(報道)」と言いたかったとみられる。

奇妙なのは、当時ホワイトハウスの報道官だったショーン・スパイサー氏が、トランプ氏は「何を言いたかったのか完璧に」わかっていると述べたこと。

この大統領のタイプミス(とみられる出来事)で、ネットはいっとき大いに盛り上がった。

史上最も高くついたハイフン

ほんのわずかの打ち間違いが大損害を招いたことも。

1962年7月22日、アメリカの航空宇宙局(NASA)は同国初の惑星探査機「マリナー1号」を打ち上げた。金星に接近し、さまざまな観測をする予定だった。


ところが打ち上げから約5分後、マリナー1号に異常が発生。NASAはロケットごと爆破して飛行を中止した。

開発にかけた1850万ドル(現在のレートで約20億3400万円)が水の泡となった。

原因はコンピュータープログラムの書き間違いとされる。ハイフン(−)が抜け落ちていたと言われているが、上線(overbar)を入れ忘れたという説もある。

イギリスのSF作家アーサー・C・クラークは、マリナー1号を「史上最も高価なハイフンによって台無しになった」と表現した。

スペルミスは福も呼ぶ

一方、単純なミスが利益をもたらすこともある。いい例が「ハリー・ポッター」だ。

イギリスの作家JK・ローリングの人気シリーズが、多くの版を重ねて発行され続けているのはご存知のとおり。そのシリーズ1作目「ハリー・ポッターと賢者の石」のある版の1冊が、今年ロンドンで開かれたオークションで約7万ポンド(約1000万円)で落札された。

高値の理由は、この版が間違いだらけだからだ。


裏表紙からしてミスがある。書名の一部である「Philosopher(賢者)」が「Philospher」になっているのだ。

奥付に記されている数字は、本来の小→大の順番ではなく大→小の順番に。さらに、本文53ページに書かれているハリーの学校道具のリストには「杖」が誤って2回書かれている。

どれも仕様もないミスだが、こうしたミスが招くのは悪い結果ばかりではない。

あの有名女優の入れ墨が

ハリー・ポッターつながりでもう一つ。

シリーズの映画にハーマイオニー役で出演してきたイギリスの女優エマ・ワトソンは昨年、右腕に入れ墨をした。女性差別に抗議する運動「Time's Up(もう終わりにしよう)」に賛同し、そのフレーズを書き入れた——はずだった。

ところが「Times Up」になってしまっているのが直後から話題になった。スペルは間違っていないが、これだと文法的に意味が通らない。


男女平等を推進する国連の親善大使でもあるワトソンは、ツイッターでこう発信した

「ニセ入れ墨の校閲者求む。アポストロフィ(')に詳しいことが条件」


スペリングの話からは脱線するが、アメリカの人気歌手アリアナ・グランデの入れ墨も、今年初めに話題になった。

自らの曲「7 Rings」(7つの指輪)にちなんで左手の手のひらに日本語で入れ墨をしたというのだが、その文字は「七輪」の漢字2文字だった。


それじゃあバーベキューグリルだよ、という指摘を受け、速やかに「七輪」の下に「指♡」を追加したアリアナ。しかし、修正になっていないという指摘が相次いだという。

「ポテト」の悪夢

政治家によるスペルミスは、世間からすぐ忘れ去られることが多い。

アメリカのミット・ロムニー上院議員は、2012年の大統領選を共和党候補として闘っていた際、スマホ用のアプリを開発。起動時に画面に現れる国名を「AMERCIA」と書いてしまった(もちろん正しくは「AMERICA」)。


この手違いは瞬間的にはネットを賑わせたが、ロムニー氏は大統領選で民主党候補のバラク・オバマ氏に敗北したこともあり、人々の記憶から薄れるのも早かった。

だが、アメリカのダン・クエール元副大統領のスペルミスは尾を引いた。

1992年6月15日、クエール氏は選挙運動の途中、ニュージャージー州トレントンのリヴィエラ小学校に立ち寄った。同校のスペリングコンテストの審査員を務めたのだ。


コンテストに参加した12歳の男子に出題されたのは「ポテト」。男子は黒板の前に立ち、「potato」と正しく綴りを書いた。

直後、クエール氏は手元の正解カードに目をやると、自信に満ちた様子で、男子に「potatoe」と直すよう伝えたのだ(しぶしぶ従った男子は、のちにメディアの取材に「指示が間違っているのはわかっていたけど、みんなの前で副大統領と議論するわけにもいかなかったし……」と話した)。

この間違いで、クエール氏は全米の物笑いの種になった。

トランプ氏が「covfefe」の一件を気にせずさっとやり過ごしたのと対照的に、クエール氏はこのミスを大きな屈辱と受け止めた。同氏はのちに、この出来事を「想像し得る最悪の瞬間だった」と振り返った。

新聞の名門も

世界的に権威あると認められている新聞も、タイプミスと無縁ではない。

米ニューヨークタイムズ紙は2014年5月19日付の紙面で、バラク・オバマ大統領(当時)の記事を掲載。その小見出しで、「response」とすべきところを「reponse」としてしまった。

英ガーディアン紙はしばしばタイプミスをやらかす新聞として知られる。自らの紙名である「Guardian」を「Gaurdian」と間違ったという逸話があるほどだ。

(英語記事 Famous spelling errors from Trump to Nasa / $50 Australian note and other major typos