田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 北朝鮮を巡る動きが活発化している。5月9日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルに対して、日米の当局者が国連安全保障理事会の制裁違反と断定した。一方、韓国政府はこの問題について「飛翔体」という解釈にこだわり、文在寅(ムン・ジェイン)政権の北朝鮮寄りのスタンスをまたもや露見している。

 また、安倍晋三首相は、飛翔体が弾道ミサイルと断定される前(6日夜)に、記者からの質問に対して、「私自身が金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と条件を付けずに向き合わなければならない」と述べた。これは直前に行われたトランプ米大統領との電話会談などを受けての発言だと思われる。

 この「条件を付けずに」という言葉が、なぜか日本のマスコミではひどく誤って解釈されているように思える。野党も、安倍首相の「変節」として批判を強めている。

 マスコミの方の一例として挙げられるのが、テレビ朝日系『報道ステーション』5月9日放送分での、コメンテーターの後藤謙次氏による解釈だろう。後藤氏は2017年の衆院解散が北朝鮮の脅威をあおり、「圧力路線」の継続を問うものだったと指摘した。

 その上で、安倍政権が北朝鮮外交に対して「トランプ頼み」であり、トランプ政権が「圧力路線」から「対話路線」に変更したことに伴い、首相も「対話路線」に変更したとする。そして、安倍政権の「対話路線」への転換が金委員長に足元を見られ、弾道ミサイルの発射につながったことは、場当たり的な外交のツケによるものだとしている。

ジャーナリストの後藤謙次氏=2012年3月
ジャーナリストの後藤謙次氏=2012年3月
 この後藤氏の解釈には、「圧力」と「対話」を二極の選択肢とした上で、どちらか一方を採れば、他方を捨ててしまったような印象を与えているだろう。もちろん、それは正確ではない。

 実際には、北朝鮮への対話の呼びかけは、あくまでも北朝鮮に対する圧力を前提に行っているものだ。また、韓国の文政権が、どう客観的に考えても信頼できる外交上のパートナーとはいえない中で、日米が北朝鮮問題について緊密な連携を取るのは当然である。