様々な分野で高齢化が進んでいるが、かつては若者が中心と思われていたものにも高齢化の波が押し寄せている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、今後、予想される高齢ネトウヨの増加について、警鐘を鳴らす。

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 静岡新聞に掲載された政治評論家・屋山太郎氏(86)のコラムに書かれた内容の一部が、社民党の福島瑞穂参議院議員の事務所から事実無根だと抗議を受けた。徴用工裁判をめぐる内容だったが、同氏は「福島氏は実妹が北朝鮮に生存している。政争の具に使うのは反則だ」と書いた。同紙は後に事実ではないとし、訂正・お詫びをした。

 これを見て思い出したのが、ネットに未だに残り続ける「李高順」と「趙春花」をめぐるデマである。千葉大学名誉教授やイオンド大学筆頭教授を務めた清水馨八郎氏が2010年、「國民新聞」に書いた「小沢一郎は済州島出身」という文章だ。ここには、「土井たか子は本名李高順と言いその弟子福島瑞穂は趙春花で日本人ではない。顔立ちもよく見ると韓人である事が分かる」とある。

 ネトウヨの特殊能力「国籍透視」を駆使した「在日認定」を、当時90歳を超えていたであろう名誉教授まで務めた立派な人物がしでかしたのである。他にも小沢一郎氏と菅直人氏を済州島出身だとし、岡田克也氏は「あやしい」と書いた。2010年といえば、まさにネトウヨによる「在日認定」が花盛りの時代で、清水氏のこの文章がソースとなり、今でもこれら2つの名前がネットでは時々書き込まれるのである。

 なお、李高順については、かつて月刊誌『WiLL』に掲載され、土井氏の側から名誉棄損の裁判を受け敗訴。同誌は謝罪文を掲載するに至った。その経緯があったにもかかわらず、清水氏は書いてしまったのである。また、福島氏の「趙春花」も誤りである。

 それにしてもこの「在日認定」、なんとかならないのだろうか。何か犯罪者が登場した場合、ネット掲示板の書き込みやSNSには「実名はよ」などと書かれる。つまり、在日が日本人のような通名を使っていると勝手に判断し、こうした卑劣なことを犯すものは在日に決まっていると考えるのだ。「日本人なら悪いことをしないはず」という妙な安心感があるのだろう。

 福島氏も土井氏もネトウヨの間では「反日議員」「売国奴」認定をされており、その流れに乗るかのように著名な評論家までデマを書いてしまった。経験も名誉も社会的地位もある人でも同様のことをしてしまう状況にあるのだ。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 これから懸念されるのが、「高齢ネトウヨ」の増加だ。今年1月、大分県の66歳の男が在日の中学生に対し、「おまエラ不逞朝鮮人」「チョーセン・ヒトモドキ」などとブログに書き、侮辱罪で科料9000円の略式命令を受けた。ここで登場する「おまエラ」の「エラ」は、韓国人の顔はエラが張っているという決めつけから来る差別用語で、嫌韓系の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のスレッドではよく登場する言葉だ。

 長年勤め上げた会社を定年退職し、さて、ブログでも始めるかな、とネットにアクセスをすると、在日や韓国を罵倒する意見がネットには多数書き込まれているのを目にする。ここで「おまエラ」などの言葉を覚えたり、「レイプは韓国の国技」などの言説を信じ込む。韓国の政治家や反日活動家に関するニュースを見て義憤に駆られ、いつしか高齢ネトウヨになってしまう。晩節を汚すのはおやめなさい、と忠告申し上げよう。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

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