古谷経衡(文筆家)

 パン業界大手の山崎製パンが1981年から実施している「ヤマザキ春のパン祭り」というキャンペーンをご存じの人も多いだろう。パン製品ごとに設定された点数シールを25点分集めると、「必ず」特製の皿がもらえるというのが目玉で、愛好家も多い。

 この「ヤマザキ春のパン祭り」をもじって名付けられた動きが、「ネトウヨ春のBAN(バン)祭り」だ。主に、ユーチューブ上の差別的表現を含む動画をユーチューブ運営側に大量に通報することにより、動画投稿主のアカウントそのものを規約違反としてBAN(停止)させるという一大運動である。

 私は、約10年間におけるネット右翼研究の中で、その「門戸」、つまりネット右翼に感化される入り口の最たるものが、ユーチューブにおける動画であると結論付けた。特にユーチューブが日本社会に浸潤したゼロ年代後半から、この傾向はますます顕著となり、ネット右翼への門戸が驚くほどの速度と熱量をもって、漫画単行本や雑誌や書籍から動画に変化していく劇的なさまを目の当たりにした。

 では、なぜネット右翼への門戸がユーチューブ動画に移ったのか。第1に、短く簡便にまとめられた動画には、リテラシー(情報活用能力)の低いユーザーに対する訴求力が最も高いことにある。第2に、ゼロ年代を通して、光ファイバーの一般家庭への劇的な普及により、動画の読み込みがどんな環境であっても技術的に容易になったことも大きい。

 特に2010年代中盤からは、大画面を有する移動体端末(スマートフォン)が爆発的に普及したことに伴い、接触点が拡張していった。これら複合的な要素により、ネット右翼への門戸の最前衛がユーチューブ動画となったのである。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 こうして、ユーチューブに差別的動画を定期的に投稿するアカウントが激増した。とともに、ひたすら韓国を呪詛(じゅそ)し、中国を嫌悪する排外的な動画も氾濫していった。

 とりわけ目立ってきたのは、2016年ごろから急増した「沖縄」に関する明確なデマを主張する動画の跋扈(ばっこ)である。例えば、沖縄の反基地活動家は中国や韓国人であり、これら外国勢力や国内の左派勢力などから金銭的援助をもらっている、などといった投稿だ。