もう一例は、ユーチューバーとして「KAZUYAチャンネル」を運営するKAZUYA氏(本名京本和也、以下京本氏)である。京本氏の運営するアカウント「KAZUYAチャンネル」では、概ね2~5分という短時間で政治や時事問題を扱う動画を投稿している。

 ネット右翼の中でも最も底辺ともいえる低リテラシー層に訴求することで、一定数の視聴者(ファン)を確保したのが京本氏の動画の特徴である。この層は、たとえ「保守論壇」による右傾偏向のコンテンツであっても、4千文字や5千文字程度の論考や、20~30分以上にわたる長時間のトーク番組の視聴には、教養水準的に耐えられないからだ。

 主張自体も、前述の竹田氏よりも非体系的で、稚拙である。テーマもやはり、嫌韓や反中、歴史修正主義、沖縄デマ、軍国主義的傾向の礼賛(教育勅語への偏執的固執)など、ネット右翼にとって古典的な色彩を帯びている。ただ、知名度において、竹田氏より圧倒的に劣後するため、「ネトウヨ春のBAN祭り」運動のターゲットとしては後発になったわけである。

 「ネトウヨ春のBAN祭り」が開始されてから、京本氏は差別的、憎悪的傾向のある動画を自ら削除することによって、BANを回避する戦術を採った。しかし、結果は竹田氏と同じくBANを食らった。ところが理由は不明だが、竹田氏とは違い、数日後に運営側からBANが解除され、「KAZUYAチャンネル」自体も存続している。

 BANを受けた後、京本氏は可能な限り、差別や憎悪表現を抑制した動画を投稿しているようだ。ただ、京本氏については、体系的知識量が低いままの状態なので、動画水準は未だに稚拙なまま推移している。しかし、それがゆえに、再びBAN指定を受けていない。

 以上、「ネトウヨ春のBAN祭り」で永久、あるいは一時的にBAN指定を受けた2例を見てもわかるように、いずれにせよ、ユーチューブ上における差別動画の繁茂に業を煮やした良心の人たちが、2018年以降、そのイデオロギーや党派性を超えて実効的に動き出したことは間違いない。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 この「ネトウヨ春のBAN祭り」運動は、「夏の~」「秋の~」「冬の~」と季節を変えながら、現在も続いている。その一方で、投稿者自体も、現実的にBANが行われる事実を鑑みて差別動画の投稿に委縮する傾向が顕著に表れている。

 動画を最大の門戸として、また最大のプロパガンダツールとして利用してきたネット右翼や、それを利用して広告収入を得たいアカウントの開設者たちは、今大きな岐路に立たされるどころか、衰亡の一途をたどっているのである。