2019年05月15日 13:46 公開

レベッカ・モレル科学担当記者(BBCニュース)


世界中で問題になっている海洋汚染が、1万メートル超の深海にまで拡大していることが分かった。アメリカ人の海底探検家が太平洋のマリアナ海溝で1日、水深1万1000メートル近くまでの潜水に世界で初めて成功した際、海底に沈むプラスチックごみを発見した。

潜水で世界新記録を達成したのは、ヴィクター・ヴェスコヴォ氏(53)。

深海の水圧に耐えられるよう設計された潜水艇を使い、4時間かけてマリアナ海溝の底を探査したところ、海洋生物のほかにビニール袋やお菓子の包み紙を発見した。

人類がマリアナ海溝の底に到達したのは、史上3度目。


初めてマリアナ海溝の底に到達したのは、1960年。ドン・ウォルシュ米海軍中尉(当時)とスイス人技術者のジャック・ピカール氏が、「バチスカーフ」と呼ばれる小型の深海探査艇「トリエステ」を使って潜水に成功した。

2012年にはカナダ出身の映画監督、ジェイムズ・キャメロン氏が単独での潜水に成功している。

今回、約1万1000メートルの深海に到達したヴェスコヴォ氏が新記録を達成した。


ヴェスコヴォ氏と探査チームは、合計で5度、マリアナ海溝の深部まで潜水した。地形探索のための機械も導入された。

「自分たちが成し遂げたことにどれほど興奮しているか、言葉では言い表せないくらいだ」とヴェスコヴォ氏は述べた。

今回の潜水を見届けたウォルシュ氏はBBCニュースの取材に、「マリアナ海溝での歴史的探査を無事に果たしたヴィクター・ヴェスコヴォ氏と、非常に優れた探査チームに敬意を表する。60年前、ジャック・ピカール氏と私は世界中の海で最も深い場所に到達した。老年期を迎えた今、若き日に訪れた場所での探査に招待してもらえて、とても光栄だった」と述べた。


探査チームによると、端脚類と呼ばれるエビに似た甲殻類の新種を発見し、水深7000メートル地点で螠(ゆむし)と呼ばれる生き物を、水深8000メートルではシンカイクサウオを目撃したという。

また、プラスチック汚染の証拠も確認された。過去に行なわれた探査でもプラスチックごみが発見されている。

年間、何百万トンものプラスチックが海に流れ込んでいるが、最終的にどこへ到達するのかはほとんど知られていない。

プラスチックは破壊されて破片になっても、他の製品のように分解されることはなく、細かくなって「マイクロプラスチック」になる。最近の研究でこの問題が指摘されている。科学者は今後、採取した深海生物の体内に「マイクロプラスチック」が含まれていないかを調べる予定だ。


今回の潜水探査は、「ファイブ・ディープス・探査」と名付けられたプロジェクトの一貫で、大西洋・南極海・インド洋・太平洋・北極海それぞれの最深部で探査を行なうというもの。

マリアナ海溝に加え、過去半年間で、大西洋のプエルトルコ海溝(水深8376メートル)、南極海のサウスサンドウィッチ海溝(水深7433メート)、インド洋のジャワ海溝(7192メートル)でも探査が行なわれた。

最後の探査は北極海のモロイ・ディープで、今年9月に予定されている。

探査に使用されたのは、米企業「トリトン・サブマリンズ」が手がけた「DSVリミティング・ファクター」と呼ばれる長さ4.6メートル、高さ3.7メートルの潜水艇で、2人まで乗船できる。水圧に耐えられるよう船体の中心部分が厚さ9センチのチタン製になっており、海のどの地点でも繰り返し潜水することができる。

深海の水圧は1000バールで、人間1人の上にジャンボジェット航空機が50機乗った状態と同等という。

(マリアナ海溝の最深部は水深1万994メートル。世界最高峰のエベレストを逆さにしてもさらに2146メートル深い。1960年に人類初の潜水が行なわれ、これまでに3度成功している)


水圧のほかにも課題はある。真っ暗で氷点下に近い水温の中で探査を行なわなければならない。こうした条件下では、映像の撮影も難しい。

米ディスカバリー・チャンネルのドキュメンタリー番組のため、探査の様子を撮影するプロダクション「アトランティック・プロダクションズ」のクリエイティブ・ディレクター、アンソニー・ゲフィン氏は、これまでに携わった撮影の中で最も複雑だと述べた。

水深1万メートル超での探査を撮影するため、潜水艇に取り付け可能な新たなカメラのシステムを開発したほか、艇内でのヴェスコヴォ氏の様子などを撮影できる設備を準備したという。

今年9月にすべての探査を終えると、潜水艇は研究者に活用してもらうため科学機関に引き渡されるという。

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(英語記事 Deepest-ever sub dive finds plastic waste