志堂寺和則(九州大大学院教授)

 東京・池袋で乗用車が暴走し、母子2人が死亡、8人が負傷した事故は、ドライバーが87歳だったために、改めて高齢ドライバーの問題が浮き彫りになった。今後も高齢化がさらに進むと予測されている日本では、緊急の対策が必要な重要課題の一つと言えよう。

 公共交通システムの充実や高齢者向け車両の開発と普及など、さまざまな方策が必要であるが、本稿では、高齢ドライバーが起こす事故の状況や現在の免許更新手続きについて確認した上で、免許更新の在り方について考えてみたい。

 ここ10年ほど日本の人身事故件数、死亡事故件数はともに減少傾向にある。しかしながら、65歳以上の高齢ドライバーが起こす人身事故件数は多少減少しているものの、死亡事故件数はほぼ横ばい状態である。

 その大きな原因は高齢ドライバーの増加にある。警察庁の統計によると、この10年間で免許人口全体ではほとんど増加していない中で、免許を保有する65歳以上の高齢者は1・6倍に増加した。しかもこの増加割合は年齢が上がるに伴って増えており、85歳以上は2・8倍にもなっている。

 免許を保有しているからと言って日常的に運転をしているとはかぎらないが、以前と比較すると、道路を走っている高齢ドライバーは確実に増加し、しかも、85歳以上、90歳以上という高年齢のドライバーも運転を継続している。

 多くの統計資料における高齢者の定義は65歳以上である。これは、1950年代、60年代に国連や世界保健機関(WHO)が用いた分類が踏襲されているためである。しかし、当時と比較して、健康で活動的な高齢者が増加した現在では、65歳以上を高齢者とすることは現実に合わなくなってきている。

 交通事故の発生比率を元にしてドライバーの年齢による危険性を比較すると、75歳くらいまでは特に事故が多いというわけではない。だが、それ以降は加齢とともに次第に事故が増えてくる。原付以上運転者(第1当事者)の免許保有者10万人あたりの交通事故件数で50~54歳と比較すると、70~74歳は1・1倍であるが、75~79歳では1・3倍、80~84歳は1・5倍、85歳以上は1・6倍と増加する。
東京・池袋で起きた事故で、現場検証する捜査員ら=2019年4月(佐藤徳昭撮影)
東京・池袋で起きた事故で、現場検証する捜査員ら=2019年4月(佐藤徳昭撮影)
 そして、免許保有者10万人あたりの死亡事故件数でも同様に50~54歳と比較すると、70~74歳は1・2倍であるが、75~79歳では1・7倍、80~84歳は2・6倍、85歳以上は4・6倍と大きく増加する。高齢ドライバーの事故の場合、事故を起こしたドライバー本人が死亡してしまうケースが多く見られる。

 75歳以上のドライバーの死亡事故の場合、60%はドライバー本人の死亡であり、これは、若年ドライバーを除くと他の年齢層の場合の倍の数字である。また、同乗者が亡くなる場合も11%ほどあり、合わせると71%が事故を起こした車内において死亡していることになる。