そして、人は権利を失うことを嫌う傾向や運転能力を過信する傾向があるため、客観的に運転能力があるかどうかを自分で判断することは難しい。そうであれば、免許更新時に運転技能が維持されているかどうかを確認することは至極当然のことである。

 本当は年齢に関係なく免許更新者全員に対して運転技能の確認をすべきであるが、さすがに無駄が多く、現実性に乏しい。このため、加齢の影響が大きくなってきていると思われる年齢に達したときから運転技能の確認をせざるを得ない。

 1回の試験で合否を決定するというような形態での実施もまた現実的ではない。高齢者は長らく試験というものから遠ざかっていることもあり、緊張のため普段通りの運転ができない者や体調を崩す者が続出するおそれがある。

 免許の有効期限までであれば、何度でも試験(以下では、運転技能の確認)を受けることができるようにしておくのが実施可能で有効な方法であるように思える。そして、レベルに達しなかった高齢者が運転を学び直すことができるようにして、可能な限り運転が継続できるような手段も提供することが必要である。また、判定基準も運転技能の確認向けの判定基準を設ける必要があるであろう。

 学び直す場としては、教習のノウハウを持つ自動車教習所が最も適している。ところが、現在、自動車教習所は高齢者講習で苦労している。高齢者講習業務が、免許取得のための教習業務を圧迫するため、高齢者講習を引き受けていない自動車教習所もあるぐらいだ。これは高齢者講習がもうからないためである。

 その一方で、少子化の影響で経営の危機に瀕している自動車教習所が増えてきており、年々、自動車教習所の数が減ってきている。高齢者に対する研修などのサービスが自動車教習所の重要な収入源となるような制度設計を施し、高齢ドライバーと自動車教習所がお互いに支え合うような関係を構築できれば「一石二鳥」だ。

 現在でも高齢者講習は高いとクレームをつける高齢者がいると聞くが、運転技能の確認や学び直しなどではかなりの経費が必要となる。高齢ドライバーからは大きな反対の声が上がるであろう。しかし、事故を起こす危険性を少しでも下げることができるのであれば、決して高いものではない。低下した運転技能を補償するような運転方法を教えてもらうなど、学び直しは高齢ドライバーにとっては非常に有益な機会となるはずである。自動車保険と同じく、自動車を運転するための必要な出費と考えるべきである。
高齢者を対象にした教習で、ポールで狭まれたコースを運転する参加者=堺市
高齢者を対象にした教習で、ポールで狭まれたコースを運転する参加者=堺市
 一連の仕組みをうまく機能させるにはいろいろと課題があるが、最初はかなり高い年齢から開始して、徐々に下げていくようにすれば、導入は不可能ではないように思える。そして、その間に自分がその年齢に到達したときにどうするかを考えることもできる。

 運転技能の確認や学び直しにかかる時間や経費などを考えて免許返納を決断するのも一つの選択肢であるし、運転継続を選ぶのも自己判断だ。一定のレベルの運転技能を持ち、責任を持てるドライバーのみが運転を行える社会に変えていかなければならない。

■強制力がなければ防げない! 高齢者の自動車免許返納を制度化せよ