このミスコミュニケーションは、トランプ大統領にバイデン前副大統領を一層意識させることになりました。トランプ氏は自身のツイッターに、「中国が再交渉を試みた理由は、ジョー・バイデンと交渉ができるという誠実な希望があるからだ」「中国は寝ぼけたジョー・バイデンか他の候補が2020年大統領選挙で勝利することを夢みている」とつぶやきました。

 トランプ大統領がバイデン氏と中国をリンクさせて投稿する意図は、同氏と同国を「悪者」に仕立てて、白人労働者の票が流れないように阻止することです。

 トランプ大統領のバイデン前副大統領に関するツイッターの投稿は止まりません。トランプ氏は20名以上が立候補し乱立状態にある民主党大統領候補指名争いは、バイデン氏とバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)の2人の戦いになると投稿しています。最終的にバイデン氏がサンダース氏を破ると予想しました。

 となると、仮にバイデン氏が民主党の大統領候補に指名された場合、トランプ大統領は同氏のトランプ政権の対中政策批判に反応し、来年11月3日の投票日まで中国に対して「弱い取引」とみなされる交渉は決して行わないということになります。

 北朝鮮は5月4、9日に、複数の飛翔体の発射実験を行いました。トランプ大統領はホワイトハウスの記者団からの質問に、「深刻だ。誰も喜んでいない」と述べました。米ABCニュースで安全保障問題を担当しているマーサ・ラダッツ記者は、トランプ大統領が批判のトーンを強めたと報道しましたが、同大統領は「(北朝鮮との)関係は継続する」とも語っています。

 米国防総省は9日、飛翔体は短距離弾道ミサイルであったと確認しましたが、案の定、トランプ大統領は問題視しませんでした。米政治サイト「ポリティコ」とのインタビューの中で、「短距離ミサイルであって、極めて普通なものだ」と答え、許容範囲であるというメッセージを送ったのです。加えて、「(金正恩朝鮮労働党委員長との)信頼関係が崩れたとは考えていない」と語りました。

 ハノイでの2回目の米朝首脳会談が物別れになったので、交渉再開を望む北朝鮮がいらだって、挑発行為に出たと解釈できます。仮にそうであるならば、北朝鮮はトランプ大統領にメッセージを発信したということになります。

 しかし、北朝鮮が短距離ミサイルの発射であればトランプ大統領は許容し、金委員長との信頼関係の維持を重視するだろうと読んでいたならば、北朝鮮は一体誰にメッセージを送ったのでしょうか。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 率直に言ってしまえば、安倍晋三総理です。無条件で日朝首脳会談開催を強く希望している安倍総理の足元を見ている北朝鮮は、短距離弾道ミサイルを保持していることを認識させ、条件付きの会談開催を迫っているのでしょう。

 その条件とは、文在寅韓国大統領が米国との仲介役としての機能を果たさないので、トランプ大統領とコミュニケーション・チャネルが太い安倍総理にその役割を担わせることです。

 そのうえで、日朝首脳会談開催ないし拉致問題解決と、トランプ大統領への「経済制裁」解除要請をバーターにすることです。安倍総理がこの条件を呑まなければ、北朝鮮は即座に首脳会談を実現しないかもしれません。