片岡亮(ジャーナリスト)

 職場や学校で顔を合わせば「昨日見た?」と、前夜のテレビ番組の話題を切り出すのが当たり前だったのも過去の話。日本人の生活に定着していたテレビの前の「家族団らん」も減った。

 その影響か、「最近のテレビはつまらない」と断じる人もいる。ただ、そういう人に限って、テレビ番組を見比べているわけでもないので、単に「見ない理由付け」をしているにすぎない。実際は、インターネットの普及などによる娯楽の多様化に伴い、テレビの視聴習慣が以前より減っただけである。

 そもそも、テレビというメディアは、人々の生活習慣に馴染ませる「商業ツール」でもある。米英、中東、中華圏、アジアの主要局を幅広くウォッチしていると、多くのテレビメディアがドラマやスポーツ、アニメなどをそれぞれ一定の時間帯に編成し、視聴者の習慣化を図っていることが分かる。いつでも好きな映像コンテンツをピックアップできて、「主導権」が視聴者側にある米ネットフリックスなどの動画配信サービスとは、似て非なるものだ。

 つまり、テレビは録画視聴を踏まえても、基準をタイムテーブルに置いているため、生活パターンが固定化している人ほど見続けやすい。中でも、報道・情報番組は生活リズムに入り込みやすいだけに、アンカーやキャスターが交代しただけで批判を浴びるのも、習慣の変化に戸惑う視聴者が多いからだ。

 2014年、『笑っていいとも!』の後継番組として始まったフジテレビ系『バイキング』も視聴習慣の変化に苦しんだ番組の一つだ。「地引網クッキング」コーナーで注目を集めることはあったが、何せ31年半続いた国民的長寿番組の後釜だけに、当初から視聴率で惨敗が続いた。

 だが、毎分視聴率で1%を割り込む苦戦ぶりも、あくまで局側の想定内だった。スタート時に司会者を曜日替わりで臨んだのも、試行錯誤しながら番組を構成していくことが前提だったからだ。果たして1年後、月曜日の司会だった俳優の坂上忍が全曜日を担当することになる。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 司会者の固定をきっかけに「生討論」という方向性も明確になり、当初1~2%台だった視聴率も、週平均4%台に乗せるまでに視聴の習慣化が進んだ。それどころか、昨年は、ついに時間帯民放トップも獲得し、番組最高の8%台を記録するまでになった。

 視聴者が増えれば、坂上の「毒舌トーク」への批判も目立ち始めるのも当然だ。ただ、低視聴率に喘いでいたころ、彼が政治や事件などシリアスな話題を悩みながら扱っていた様子など、現在の視聴者は知らないだろう。