現在の大坂チームの構成は、ヘッドコーチがジャーメーン・ジェンキンス、フィジカルトレーナー(PT)がアブドゥル・シラー、アスレチックトレーナー(AT)が茂木奈津子、マネジメント会社IMG出向のスチュアート・ドゥグッドは辣腕マネジャーといわれ、加えてハイチ系米国人の父親レオナルド・フランソワ。また、4大大会には日本テニス協会の吉川真司ナショナルコーチが、助っ人としてつく。

 ジェンキンスは元NCAA(全米大学体育協会)チャンピオンで昨年までビーナス・ウィリアムズのヒッティングパートナーだった。シラーはNFL(米プロフットボール)のトレーナーからセレナのチームに招かれた「筋肉の専門家」だ。ジェンキンスの弟は現在もセレナのチームの一員で、前コーチのバインも以前はセレナのヒッティングパートナー。大坂チームは、ウィリアムズ一家の経験や情報を吸収した専門家集団ということだ。心技体の技と体をジェンキンスとシラーが受け持ち、心の部分を茂木トレーナーがカバーする構造である。

 日本のスポーツ界のトレーナーのほとんどは、マッサージや鍼灸(しんきゅう)による肉体整備を担当する。茂木トレーナーは慶応大学からスポーツマッサージ専門学校で学んだ異色のキャリアを持つ。一方、シラーのようなPTは選手の肉体を作り上げるのが仕事になる。選手にスピードが必要と判断すれば、そのためのトレーニングメニューを作り、サーブを強化するために上半身を鍛える。日本にPTがいないのは、プロとアマチュアの違いからくる文化の差なのだろう。

 テニスにチーム体制を持ち込んだのは、1980年代のマルチナ・ナブラチロワだった。そして、現在のように役割分担が細分化されたチームの定着は、ロジャー・フェデラー、ウィリアムズ姉妹以降のこと。専門家の中には悪いヤツもいて、マリア・シャラポワのケースのようにドーピングが発覚したりする。

 チーム経営には当然、金がかかる。高額賞金がもたらしたシステムとも言えるし、昨年、30歳を過ぎて全米、ウィンブルドンで準優勝したケビン・アンダーソンはこう話していた。

 「37歳のフェデラー、32歳のナダル、31歳のジョコビッチなど、高齢選手が衰えを知らず活躍している理由は、賞金分配が上に厚いのも一因だ。莫大な賞金で各分野の優秀な専門家をチームに加えてキャリアを延長させることができる―」
新コーチのジャーメーン・ジェンキンス氏(右)と練習する大坂なおみ=2019年3月6日、米カリフォルニア州インディアンウェルズ(共同)
新コーチのジャーメーン・ジェンキンス氏(右)と練習する大坂なおみ=2019年3月6日、米カリフォルニア州インディアンウェルズ(共同)
 ウィリアムズ姉妹の頭脳が大坂に流れ込んでいるが、それでも心の安定まで得ることはできない。大坂、そして錦織はローランギャロスでどんな活躍をするだろうか。チームが陣取るファミリーボックスに悲喜こもごもの2週間が始まる。

■大坂なおみの国籍で「政権倒れる」毎日新聞記者のあきれた論理
■大坂なおみを待ち受ける日本の「国籍ルール」はここがヘン
■「最終セットで負けない」錦織圭の勝負強さを支えた怒りの感情