茂木健一郎(脳科学者)

 「ゆたぼん」と名乗る少年のことを知ったのは、ネットで配信された新聞社の記事がきっかけだった。多くの方もそうだったようだ。やはり、ネット全盛の時代になっても、きちんと記者が取材して記事にした情報の影響力は大きい。

 その記事によると、ゆたぼんは沖縄在住で、学校に行かずにユーチュバーをしていて、「少年革命家」を名乗っているとのこと。

 私は、面白い子がいるんだなあと思うと同時に、ゆたぼんがいろいろ学んで、幸せな人生を送ればいいなあと心から思った。そして、ゆたぼんのことをネットで少し書いた。

 偶然というのは不思議なもので、記事を読んだ直後に私は仕事でゆたぼんの住む沖縄にいた。講演会を終えて控室に戻ってきたらスタッフの方が、「あの、この方々が会場にいらしていたようです」と名刺をくださった。

 なんと、ゆたぼんとお父さんだった。

 「講演会にいらしていたようなのですが、どうしても用事があるということで、途中で帰られたのです」

 そういえば、後半になって親子連れが退席されるのを見たような気がしていた。思い出せば、お子さんの方は麦わら帽子をかぶっていたようにも思った。

 ゆたぼんだったんだ! わざわざ足を運んでもらって申し訳なかったなあと思い、連絡をしたら返事があった。もし可能ならば会いたいという。

 ちょうど夜の会食前に10分くらい時間がとれそうだったので、「いらっしゃいますか?」とお尋ねすると、「これから向かいます」という。

 待ち合わせの場所に来たゆたぼんと、お父さん、それにご家族の様子を見て私はなんだかほっこりとしてしまった。

 そこには、ネット上の評判、イメージだとか、そういうことを超えた一つの家族があり、元気で目を輝かせている少年がいたからである。

 私自身、ユーチューブを含めてネットをよく使う方なので、ゆたぼんとのこの出会いを動画で撮ってゆたぼんが配信したらいいと思ったし、またいくつかゆたぼんに聞きたいこともあったので、「じゃあ、動画を撮ってユーチューブで配信しようか」と言った。それで、本当に出会った直後に、お父さんがスマートフォンで撮影して、私とゆたぼんの最初の会話が記録されることになった。
 ゆたぼんと直接話して思ったことは、そこには利発そうな、好奇心に満ちた10歳の少年がいるということで、学校に行っていないことを除けば何も特別に変わったことはないということだった。