そのトランプ政権の外交手法を分析すると、ゲーム理論でいう「トリガー戦略」に似ている。これは交渉相手が裏切れば、それを許さず、報復姿勢を持続的に採用するものだ。現在の中国や北朝鮮、イランに対する姿勢がこれに当てはまるといえるだろう。

 このトリガー戦略に近いのが、「しっぺ返し戦略」だ。ただ、トリガー戦略ほど「強い」ものではなく、一度裏切られたら、そのたびに報復していく。それゆえ、トリガー戦略の方が長期的で安定的な協調関係を生み出しやすいといわれている。

 北朝鮮に対しては、国連安全保障委員会の決議違反をしたことにより、米国の制裁は米朝首脳会談の進展にかかわらず、全くぶれていない。また、米国の姿勢に日本が完全に同調していることで、トランプ政権には、日本がトリガー戦略の心強いパートナーとして映るに違いない。

 トランプ大統領と安倍首相との政治的「蜜月」には、このトリガー戦略の採用、あるいは軸がぶれない外交姿勢に裏付けられたものであるように思える。先ほどの拉致問題への関与はその一例であろう。

 だからこそ安倍政権は、トランプ政権の拉致問題に対する理解を背景にして、金委員長との首脳会談を実現させ、拉致被害者の救済を完遂すべきだ。にもかかわらず、なぜか日本のマスコミは、この外交上の協調関係を低評価して、話題をつまらない方向に限定する傾向にある。

 その典型が、今回の安倍首相とトランプ大統領に関する記事にも表れている。例えば、朝日新聞の霞クラブ(外務省担当記者クラブ)のツイッターは、千葉で行われた両首脳のゴルフの写真に対して、「とうとうトランプ大統領の運転手に」と低レベルな揶揄(やゆ)を書いていた。
安倍晋三首相が運転するゴルフカートに乗り、笑顔を見せるトランプ米大統領=2019年5月、千葉県茂原市の茂原カントリー倶楽部(内閣広報室提供)
安倍晋三首相が運転するゴルフカートに乗り、笑顔を見せるトランプ米大統領=2019年5月、千葉県茂原市の茂原カントリー倶楽部(内閣広報室提供)
 その写真では、安倍首相がトランプ大統領を横に乗せて、ゴルフカートを運転していたからだ。だが、インターネットのいい所は、このような低レベルな書き込みに対して、米国で行われた両首脳のゴルフでは、トランプ大統領の方が運転していたと写真を添えて即座に反論できる点にある。