高橋知典(弁護士)

 小学生ユーチューバーとして知られる「ゆたぼん」が学校に通わなくなったのは小学校3年生のとき。宿題を拒否したところ、放課後や休み時間にさせられ不満を抱き、担任の言うことを聞く同級生もロボットに見え「俺までロボットになってしまう」と、学校に通わないことを決意したという。

 私は弁護士として、様々ないじめ案件や不登校案件にもかかわるが、自分の経験と、よくいわれる子供の年齢別の特徴を踏まえれば、今回のゆたぼんの言動にこのままでいいのだろうかと心配になる。

 この年齢の子供たちは、「対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となり、自分のことも客観的にとらえられるようになるが、発達の個人差も顕著になる」とされている。特に、他の子供たちと自分のことを比べるようになったり、善悪について自分で考えようとしたりする年齢でもある。この成長の過程、個人差のことを9~10歳の壁といったりもする。

 一方で、8歳ごろ(小学2、3年)までの小学校低学年の時期の子供は、「大人が『いけない』と言うことは、してはならないといったように、大人の言うことを守る中で、善悪についての理解と判断ができるようになる」年齢といわれている。大人が言う「正しいこと」を子供が頼りにしているため、よく子供同士のけんかでも、「先生にいうよ」というような言葉を頻繁に使うのがこの年齢でもある。

 今回のゆたぼんの不登校になる年齢は小学3年であり、まさにこの「8歳ごろ」までの「大人の言うことを善悪の判断根拠にする時代」から、「自分たちで物事を考えだす時代」への移行期にあったといえる。

 ゆたぼんが見た「ロボットのような同級生の姿」が、「親や先生の言うことを聞いて、その通りに動き、ほめられて無邪気に喜ぶ同級生の姿」のことだとしたなら、今まで彼もその子供の中にいて、気が付かなかっただけの可能性がある。ゆたぼんは他の子供に先駆けて、自分を客観視できるようになり、周囲の子供が、大人に従順な様子に気が付いただけではないのかと考えられるのだ。
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
 そうすると、彼は「ロボットを生む学校」から飛び出したのではなく、「親や先生にほめられて無邪気に喜ぶついさっきまで自分がいた子供の中」から、飛び出したのではないかと思われる。しかも、「従順な子供の中から」飛び出しただけではなく、ついでに学校に行かず「学校の中から」も飛び出してしまっているわけだ。

 今回のゆたぼんもそうだが、本来は不登校で失う可能性のある義務教育制度や学校教育の持つ価値を無視することはできない。

 端的に義務教育とは何かについて説明すると、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする」という憲法26条2項に記載のあるように、義務教育を受けることが無償であることと、保護者は子供に教育を受ける機会を用意する義務があることを指すものだ。