2019年05月31日 13:53 公開

ジェイムズ・ギャラガー健康・科学担当編集委員、BBCニュース

遺伝子組み換えによってクモの毒を作る機能を備えた菌類が、マラリアを媒介する蚊を短期間に確実に駆除できることが、最新の研究で明らかになった。

アフリカのブルキナファソで行われた実験では、45日間で99%の蚊が死んだという。研究チームによると、この研究は蚊の絶滅ではなくマラリアの拡大防止を目的にしている。

マラリアは、マラリア原虫を宿した蚊に血を吸われることで感染が広がる病気。

世界中で年間2億1900万件の感染例が報告され、毎年40万人が亡くなっている。

研究は学術誌「サイエンス」で発表された。

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この研究を行ったのは、米メリーランド大学とブルキナファソの健康科学研究所の共同チームで、マラリアを媒介するハマダラカが感染する「Metarhizium pingshaense」という菌を特定した。

次に行ったのは、この菌の強化だ。

メリーランド大学のレイモンド・レジャー教授は、「この菌は遺伝子組み換えがとてもしやすい種だ」と説明した。

研究チームは、オーストラリアに住むジョウゴグモの一種に見つかった毒に注目。蚊が菌に感染した際に、その菌が毒を生成するよう、この遺伝子情報を菌に組み込んだ。

レジャー博士は、「クモは昆虫に牙を突き刺して毒を注入する。私たちはこの牙を菌に置き換えた」と話した。

ラボ内の実験では、遺伝子操作した菌の方が早く蚊を殺すことができるほか、宿主を殺すために必要な胞子の数も少ないことが分かった。

その後、ブルキナファソに600平方メートルの擬似的な村を作り、現実の環境で臨床実験を行った。村には草木や小屋、水場、蚊の成長に必要な養分などが備えられた。

村は2重の蚊帳に覆われ、蚊や菌が外に出るのを防いだ。

実験では、菌の胞子をごま油とまぜ、黒い綿シートに塗りつけた。ここに蚊が停まると、菌に感染する仕組みだ。

研究チームは初め、1500匹の蚊を投入して実験を開始した。

その結果、菌がない状態では蚊の数は増加した。しかしクモ毒を生成する菌を使うと、蚊の数は45日後に13匹まで減ったという。

メリーランド大学のブライアン・ラヴェット博士は、「遺伝子組み換え菌は、たった2世代で蚊の集団を壊滅させてしまった」と説明した。

また実験では、この菌はハマダラカにだけ毒性を発揮し、ハチなど他の昆虫には影響がないことが明らかになった。

ラヴェット博士は「私たちの技術は蚊を絶滅されることではなく、この地域でのマラリアの感染を止めることに目的がある」と語った。

蚊が殺虫剤への耐性をつけている中、マラリア流行を抑える新たな技術が必要とされている。

世界保健機関(WHO)は、アフリカで最もマラリアの被害の大きい10カ国で、感染例が増加傾向にあると警告している。

この研究について英オックスフォード大学のマイケル・ボンソ-ル教授は「素晴らしい、とてもワクワクする研究だ」と語った。

「この遺伝子組み換え菌を使って蚊の個体数をコントロールできる見込みは高い。過度の規制によってこの技術や、遺伝子組み換え技術を使ったその他の個体数制御法の実行可能性が失われないよう、生物学的安全を確保するための適切な規制が必要だ」

リヴァプール熱帯医学大学のトニー・ノーラン博士も、「この結果は前向きなものだ」と話した。

「殺虫剤への耐性が高まり、従来の個体数制御法にも影響がある。こうした中、従来の方法を補う新しい技術が必要とされている」

(英語記事 GM fungus 'kills 99% of malaria mosquitoes'