福田充(日本大学危機管理学部教授)

 令和と元号が改まった2019年5月、川崎市多摩区登戸で28日発生した殺傷事件により、2人が死亡し、18人が重軽傷を負った。小学校のバス停でスクールバスを待っていた小学生の列を狙った犯行であった。

 高齢の伯父夫婦の家に住んでいた容疑者は既に50代を迎え、ひきこもり状態の生活を送っていたと報じられている。容疑者は犯行現場で自殺したため、その動機を完全に解明することは難しい。だが、合理的に解釈すれば、介護が必要になった伯父夫婦と、収入のない自分の将来を悲観した「自暴自棄犯罪」の一種と分類することが可能である。

 こうした自暴自棄犯罪は、これまでも繰り返されてきた。例えば、2008年の秋葉原無差別殺傷事件では、20代の男が東京・秋葉原の歩行者天国に車で突入、歩行者を跳ねながら暴走した後、車から降りて歩行者に次々と包丁で襲いかかり、7人が死亡、10人が負傷した。

 2016年に宇都宮市で起きた爆発事件では、元自衛官の60代の男が宇都宮城址(じょうし)公園で自作の爆発物によって自殺したところ、付近にいた男性3人が巻き込まれて重軽傷を負った。この容疑者は、自宅など3カ所連続で爆発事件を起こしている。

 この二つの事件に共通するのは、自分が困難な状況に追い込まれた理由として、家族や知人との人間関係や、仕事、経済的事情などへの恨みや怒りを、犯行の事前にインターネット上に書き込んで残していたことである。この点から、犯行に及ぶ動機が、社会に復讐(ふくしゅう)するために不特定多数の他人を巻き込んで殺すというものであったと解釈できる。

 このように精神的に、または経済的に社会生活が困難な状況に追い込まれた個人が自暴自棄な精神状態になり、不特定多数の他人を巻き込んで殺して自分の人生を終わらせようとする犯罪のことを、「自暴自棄犯罪」と呼ぶことができる。
小学生を含む複数の人が刺され、騒然とする川崎市多摩区の現場付近=2019年5月28日午前
小学生を含む複数の人が刺され、騒然とする川崎市多摩区の現場付近=2019年5月28日午前
 まさに、これらの事件は、自暴自棄犯罪の特徴を兼ね備えているといえる。また、その他で共通するのが、用意周到に爆弾や車などの凶器、道具を準備して犯行に及ぶという計画性にある。

 こうした特徴を考えるとき、今回の川崎殺傷事件もこの自暴自棄犯罪の特徴に当てはまる点が多いことがわかる。