池田小の事件以降、小学校や中学校では、正門など出入り口の一元化や警備員の配置、監視カメラの設置、教員の防犯指導強化や刺又(さすまた)の導入など、防犯体制が強化されてきた。外部者による学校への自由な侵入はより困難になったのである。

 それでも、今年4月には秋篠宮家ご夫妻の長男、悠仁さまの通うお茶の水女子大付属中に侵入し、悠仁さまの机の上に刃物が置かれた事件が起きた。このときは、監視カメラなどにより、容疑者が素早く特定され、逮捕されている。

 確かに、児童や生徒の学校内での安全対策は強化されてきた。だが、学校を一歩でも出ると、道路や駅、電車内、店舗など街中のいたるところに犯罪や事故のリスクは潜んでいる。

 これらのリスクをゼロにすることは極めて困難である。特に、自分が逮捕されることも、死ぬこともいとわない自暴自棄犯であれば、どのような状況であっても、包丁やバットなどの凶器や車などを使って、子供たちを襲うことは容易である。

 では、このような状況において、こうした自暴自棄犯による大量殺傷事件に対する予防策はありうるだろうか。

 今回の川崎殺傷事件のような事例は、発生段階またはその直前で事件の被害を防ぐことは極めて困難である。こうした包丁などの凶器を持って襲ってくる自暴自棄犯を止めることができる防具や武器を持った警備員や警官を街中に配置することは、現実的ではない。
容疑者の自宅から段ボール箱などを運び出す神奈川県警の捜査員=2019年5月29日、川崎市麻生区
容疑者の自宅から段ボール箱などを運び出す神奈川県警の捜査員=2019年5月29日、川崎市麻生区
 危機管理において求められるのは、事件発生時や発生後に行うクライシス・マネジメント(crisis management)だけではない。事件が発生していない平常時に行うリスク・マネジメント(risk management)によって、こうした自暴自棄犯を出さない、事件を起こさない予防、防止策が必要なのである。

 その予防や防止のための主流アプローチが二つある。地域社会などのコミュニティーにおける「社会福祉的アプローチ」と、インターネットや会員制交流サイト(SNS)、監視カメラなどテクノロジーを用いた「監視的アプローチ」だ。