生命倫理問題研究に関する米大統領委員会(生命倫理委員会)勧告(要約)


パートⅠ エボラと倫理課題概観
勧告1 相互に結びついた世界では、倫理的にも国益の面からも、米国政府には公衆衛生上の緊急事態に備え、世界的な対応に協調して加わる責任がある。

勧告2 米国は国内および国際的な公衆衛生上の緊急事態に対応する能力を強化すべきである。その中には (1)資金確保や保健分野の関係機関と協力して世界保健機関(WHO)の危機対応能力強化をはかる (2)すべての国内および国際的な公衆衛生上の緊急事態に責任を持つ保健担当官を政府内に置く (3)命令系統の円滑化、緊急対応技術の取得と維持のための資金確保などを通じ、米公衆衛生局の展開能力を強化する。

勧告3 政府は教育とコミュニケーションを通じ、公衆衛生対策の必要性を社会に伝える責任がある。コミュニケーションには (1)個人およびコミュニティが健康を守れるよう正確で有益な情報を誰もが得られるかたちで提供する (2)公衆衛生対策で影響を受ける人たちの価値観とその背景要因を尊重しながら情報を提供する (3)公衆衛生の緊急事態に生じやすい差別や偏見を低減する―の3つの目的がある。

勧告4 流行が急速に広がるような緊急時には、公衆衛生分野の意思決定に倫理原則を素早く反映させる必要がある。公衆衛生に関する質の高い倫理的知見を生かし、リアルタイムで入手可能な根拠に基づいて対応しなければならない。すべての国内および国際的な公衆衛生上の緊急対応を統括する保健担当官は倫理課題にも責任を持つべきである。

パートⅡ 保健計画の策定と対応
勧告5 政府および保健機関は感染拡大を防ぐために隔離、移動制限などの強制策を実施する際には、入手可能な科学的根拠に基づき、できるだけ強制性の小さな手段をとるべきである。さらにそうした手段をとる理由を明確に伝え、常に情報を更新して公開しなければならない。とりわけ、大きな影響を受ける人たちへの配慮が必要である。

勧告6 エボラ流行期には、研究が実施されるコミュニティで持続的に利用できる範囲で最良のケアを研究の全参加者に提供しなくてはならない。臨床試験は方法を厳格に定め、対象となるコミュニティに分かりやすく説明し、理解を得られる結果を生み出すように計画しなければならず、研究の遅れも極力、短くする必要がある。プラセボ(偽薬)対照群を置く試験は、適切に計画されれば、この条件を満たすことができる。また、無作為化の適応といった試みも、研究目標を実現する手段と考えるべきである。研究チームは立案段階から影響を受けているコミュニティに積極的に関わり、こうした条件を反映できる試験計画を決定しなくてはならない。

勧告7 米国政府は、エボラウイルス関連の生体試料の採取に対し、公衆衛生上の緊急事態におけるインフォームド・コンセント(十分に説明した上での同意)やプライバシーの適切な保護など、倫理的な手順を踏まえるように確認すべきである。米国政府はまた、できるだけ多くの人が関連研究の成果から利益を得られるようにすべきである。パートナー機関との対話を重ね、地元科学者らと協力して活動することで、米国内および海外で研究の利益を公正に配分するための効果的な戦略を打ち出すことが可能になる。