慰安婦問題の蒸し返しや、いわゆる「元徴用工」問題といった国内問題に関して、韓国は日本に責任をなすりつけ始めた。このことでもわかるように、文政権の日本への姿勢転換は鮮明である。この文脈上で、レーダー照射問題を、岩屋氏の中途半端で性急な「媚韓」的態度で対応すべきではないと考える。

 こう書くと、中途半端な自称「リベラル」系の人たちや、「ハト派」と表現されれば誇らしいと信じている愚かしい人たちの意見が出てくる。「そういう強硬な意見は、単に愛国主義的な意見の歪みだ」という手合いだ。全く理に適う思考に欠けていると思う。

 この種の意見は、見かけの「平和」や「友好」を口にする一種の「偽善者」ではないだろうか。ちなみに、政治学者で大和大講師の岩田温氏の『偽善者の見破り方』(イーストプレス)には、その種の「偽善者」たちのわかりやすいサンプルが多数あるのでぜひ参照されたい。

 「協力」関係がまずあって、それに対して相手側が最初に「裏切り」を選んでくるならば、こちらもそれに対して「裏切り」で応じるのが、長期的には「両者」とも最も得るものが大きくなる。これはゲーム理論でいう「しっぺ返し戦略」(オウム返し戦略)であり、最も協力関係を生み出しやすい戦略である(参照:渡辺隆裕『ゼミナール ゲーム理論入門』、ロバート・アクセルロッド『つきあい方の科学』)。

 相手と同じことをするので、相手側は「裏切り」をやめて、「協力」を表明すれば、こちらもそれに応じて「協力」することになる。間違っても自分の方から「協力」を持ち出すべきではない。そうすれば、再び協力関係が構築できず、日韓の関係は不安定になり、両国が損失を被る。

 特に、現在の東アジア情勢のように、一寸先には何が起こるかわからない不安定要素な状況では、最初から長期的な予想を積み上げていくことは困難である。場に合わせて対応していく手法を磨いていくことが望ましい。
会談前に握手する(左から)韓国の鄭景斗国防相、シャナハン米国防長官代行、岩屋防衛相=2019年6月2日、シンガポール(共同)
会談前に握手する(左から)韓国の鄭景斗国防相、シャナハン米国防長官代行、岩屋防衛相=2019年6月2日、シンガポール(共同)
 完全に将来を合理的に予測するのではなく、その場その場の情報を元に戦略を組み上げていく「限定的合理性」を前提にした政治や安全保障の戦略が大切になる。つまり、「しっぺ返し戦略」は、限定合理性の観点からも望ましい戦略なのである。

 今回は、韓国側が裏切ったのだから、岩屋氏は「裏切り」、つまり非協力姿勢を採用するのが最も望ましい。たとえ甘言だとしても、自ら進んで「協力」を言い出すべきではないのだ。