2019年06月06日 12:26 公開

オーストラリアの公共放送、オーストラリア放送協会(ABC)の本社を連邦警察が家宅捜索したことをめぐり、メディア業界や権利団体から抗議の声が挙がっている。

警察は5日、ABCの記者2人と報道局長1人を名指しした捜索令状を持って、ABCのシドニー本社を家宅捜索した。ABCは強制捜査に抗議している。

4日にも、機密情報を漏えいした疑いで大手メディア、ニューズ・コープ・オーストラリアの記者宅を調べており、懸念が広がっていた。

BBCはこれを受け、「我々のパートナーであるABCに対する警察の家宅捜索は報道の自由への攻撃であり、BBCは深い懸念を感じている。世界各地でメディアから自由が奪われている中、公共の利益のために報道をしていることで、公共放送が標的となっているとしたら非常に気がかりだ」との声明を発表した。

https://twitter.com/BBCNewsPR/status/1136217979757256705


ABCのデイヴィッド・アンダーソン社長は、「今回の捜査には報道の自由に関する正当な懸念がある」との声明を発表した。

「ABCは所属ジャーナリストの側に立ち、情報源を守り、明らかに公共の利益になる場合には、国家安全保障や情報機関に関する問題だろうと、恐れず偏らず報道していく」

オーストラリアのジャーナリスト労働組合も、2件の家宅捜索は「オーストラリアの報道の自由を侵害する不穏な傾向だ」と述べた。

豪ジャーナリスト自由連盟のピーター・グレスト会長は、アルジャジーラで記者をしていた2013年に安全保障を脅かしたとしてエジプト政府に拘束された出来事を挙げ、今回の捜索は「これと同じ領域にある」と警告した。

オーストラリアの全国報道クラブは声明で、「ジャーナリストが職務を遂行する権利を脅かす」と懸念を表明した。

国境なき記者団(RSF)は、「こうした捜索は独裁国家で目にする光景であって、民主主義国家にあるまじき光景」と述べた。

なぜ家宅捜索を?

今回の家宅捜索は、2017年7月10日にABCが発表した「ザ・アフガン・ファイルズ」という報道シリーズに関連するものだとみられている。

このシリーズで同局は、「オーストラリア軍がアフガニスタンで行った違法行為や不法殺人疑惑」を明らかにした。「ABCにもたらされた何百ページにもおよぶ極秘の国防省文書に基づいた報道」だという。

連邦警察は、ABCに対する家宅捜索は「機密情報を公表した疑い」に関するもので、「捜索令状は2017年7月11日に国防軍司令官と当時の国防相からの照会を受けたもの」と説明した。

ABCの調査報道チームを率いるジョン・ライオンズ編集長は捜索の様子をツイッターで実況。警察がABCのコンピューターシステムに保存されている「何千もの内部電子メール」を含む9214件のファイルを確認していたと明らかにした。


一方、4日に行われたニューズ・コープ・オーストラリア所属のアニカ・スメサースト氏の自宅における家宅捜索は、2018年にスメサースト氏が発表した、政府がオーストラリア国民に対するスパイ行為を計画しているという報道を受けてのもの。

警察は、この捜索令状も「機密情報を公表した疑い」によるものだとしている。

ニューズ・コープ・オーストラリアはこの捜索は「許しがたく乱暴」で「危険な脅迫行為」だと非難し、人々の知る権利が政府によって侵害されていると指摘した。

警察は、ABCとスメサースト氏の家宅捜索は関連しておらず、どちらも「個別の機密情報を公表した疑いによるもので、1914年刑事法に違反しており、オーストラリアの国家安全保障を脅かす可能性のある非常に深刻な事態だ」と説明した。

また、警察は「常に独立し、公平な立場にある」と一連の捜索を擁護した。

これとは別に、オーストラリアのラジオ局2GBのキャスターを務めるベン・フォーダム氏が4日、難民を乗せた船6隻がオーストラリアに向かっているという情報をフォーダム氏がどうやって得たのかを調査していると明らかにした。

BBCがオーストラリアの内務省に取材したところ、報道官はこうした調査の存在について肯定も否定もしなかった。

フォーダム氏は、「私が情報源を明かす確率はゼロだ。きょうも、あすも、来週も来月もしない。そんなことは絶対にない」と述べている。

オーストラリアでは18日の下院総選挙で、2013年から政権を担う与党保守連合(自由党、国民党)が野党・労働党を破り、政権を維持。大方の予想と異なり、スコット・モリソン首相が続投する結果となった。

モリソン政権は昨年、スパイ行為に対する新たな刑事法を制定したが、人権活動家からはジャーナリストや内部告発者を標的に使われる可能性があると指摘している。

モリソン首相はスメサースト氏の自宅で家宅捜索が行われた件について、報道の自由を支持していると述べた一方、「法律を守っていれば問題ない」と答えた。

野党・労働党はピーター・ダットン内相に、相次ぐ報道関係者への強制捜査について説明を求めている。

(英語記事 Outcry as Australian police raid broadcaster ABC