所功(京都産業大名誉教授)

 現行の日本国憲法は、日本的な国柄を示す第1章を「天皇」とし、第1条で天皇を国家・国民統合の象徴と意義付ける。それとともに、第2条で「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と明示している。つまり、象徴天皇の地位は、古代以来の皇統血縁者によって世襲することが大原則である。

 その世襲方法は、明治以来の皇室典範を受けて、昭和22(1947)年施行の皇室典範(法律)に定められた。とりわけ第1条に「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と限定されている。つまり、「皇統に属する」血縁者であることが大前提であり、それには男系の男子、男系の女子、女系の男子、女系の女子も含む。ただ、歴史的に男系が長く続き、男子が多いことを重視して、「男系の男子」に絞ったのである。

 しかし、戦後七十数年間に、連合国軍総司令部(GHQ)の皇室縮小(弱体)化政策や少子高齢化の進行などにより、皇室構成者が漸減してきた。側室庶子も養子縁組も認めない現行典範の制約などにより、令和元(2019)年現在、若い男系男子は悠仁親王お一人しかおられない。また、今は皇族の女子9名(内親王3名、女王6名)も、一般男性と結婚すれば皇籍を離れるほかない(皇室典範12条)から、やがて皆無となる恐れがある。

 そこで、一昨年6月に成立した「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」は、特に付帯決議を加え、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」を、「皇族方の御年齢からしても先延ばしすることのできない重要な課題であることに鑑み、本法施行後速やかに、皇族方の御事情等を踏まえ、全体として整合性がとれるよう」、政府も国会も検討することを、与野党合意で明確に求めている。

 これによって、平成17(2005)年の小泉純一郎内閣に始まり、同24(2012)年の野田佳彦内閣に受け継がれながら、ほとんど動かなかった「皇室典範改正準備」が、ようやく再開されることになる。ただ、この十数年間で事態は一層深刻化しており、今度こそ政府で実現可能な具体策を練り上げて、国会で与野党合意により改正法案を成立させてほしい。

 この事態を建設的に前進させる一助として、ここでは甲案と乙案を分けて、各々に若干の具体案を提示するので、議論の叩き台にしていただきたい。まず甲案とは、現行典範の男系男子に限る継承原則を厳守する場合である。また乙案とは、その原則を残しながら、当代の特例として、男系女子の継承(女性天皇)も一代限りで可能とする場合である。
 なお、歴史上に前例のない女系天皇は、当面現実にあり得ないことだから、議論を次世代に委ねて、当世代は対象としないことにすべきであろう。

 甲案では、三つの具体案が考えられる。まず(イ)は、現行の典範と特例法にのっとって「男系の男子」のみで継承する場合である。