鈴木涼美(社会学者)

 24歳年下の男性と婚姻関係にあった磯野貴理子さんが、テレビ番組で離婚したことを打ち明けた。自身にとって2度目の離婚となったが、何より元旦那から告げられたその理由が「自分の子供が欲しい」という内容だったことが、一部で物議を醸している。

 磯野さんは現在50代、元旦那は30代。女性の方が現実的に子供を授かるのが難しい年齢であるため、その離婚事由は多くの女性から「残酷すぎる」「わかっていたはずなのに無責任」「あまりに悲しい」などの反応を引き出したし、30代後半の未婚女性である私にも、そのニュースはずっしり重く響いた。

 この男性について、冷酷である、と攻め立てることは容易ではある。少なくとも常識的に考えて結婚する際には添い遂げることを想定するはずなのに、彼女の年齢を考えて答えを出したはずではなかったのか。経済面での援助を期待していたのではないか、などと臆測を立てることも簡単だ。

 ただ、そんなことを言ってもどんな夫婦にも離婚の事由はあるわけだし、女性が一定の年齢を越えれば子供を作るのが現実的でなくなるのも事実だし、人の気持ちがそうそう一貫していないことも責められないし、彼を責めたところで少なくとも私は救われた気がしない。

 大体、当該夫婦が24歳も年が離れていたことが必ず合わせて報道されるが、旦那のこのような選択は、実は磯野さんが同い年の男性と結婚をしていたとしても起こり得ることなのだ。

 男性は50代だろうと70代だろうと新たに「自分の血のつながった」子供を作れる可能性がある。同い年の男性と、自分がまだ子供を作るのに適した年齢の頃に結婚したところで、子宝に恵まれなかった女性が、40代50代になった時に、磯野さんと同じような理由で離婚を言い渡される可能性は十分あるし、実際にそのようなことを経験して傷ついた女だって少なからずいるだろう。

 以前、大変年の離れた男性と結婚した女性政治家が、やはりテレビ番組で男性側の「普通の家庭を作り子供を育てる可能性」を奪ったなんて言われたことがあるが、男性の生殖機能を考えれば年齢差が大きく関係しているとは言いにくく、そんなことを言ったらすべての高齢女性はどんな年齢の男性とも結婚を許されない、あるいは身体的な理由で不妊となった男性しか選べないということになるので見当違いな批判だと言って良い。

 では、そもそも磯野さんの旦那の選択の何が「残酷だ」と感じさせるのだろうか。
左から『おそく起きた朝は・・・(現在のはやく起きた朝は・・・)』に出演する森尾由美、磯野貴理子、松居直美。(撮影・大西正純)
左から『おそく起きた朝は…(現在のはやく起きた朝は…)』に出演する森尾由美、磯野貴理子、松居直美=大西正純撮影
 年齢の離れた女性と結婚しておいて今さら気持ちが揺れたことだろうか。女性の気持ちより自分の願望を優先したことだろうか。そもそも年齢的にある程度制限のある女性と結婚したことだろうか。夫婦の形を壊さないまま養子縁組などの解決策を探さなかったことだろうか。妻にだけ子供ができない責任を押し付けたことだろうか。

 では、子供が欲しいからという理由で別れを告げられるのと、夫婦関係を維持したまま、外で子供を作られるのと、女性はどっちが酷だと感じるだろうか。