田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 世界的な経済政策論争の焦点が「緊縮政策」か「反緊縮政策」かという対立にあることは、2008年のリーマンショック前後から顕在化していた。

 日本では、90年代から続く長期停滞で、既にこの論争の対立軸に沿った経済政策の是非が長い間争われている。今日、話題の中心である消費増税を巡る論争も、緊縮と反緊縮の路線対立だといえる。

 日本経済新聞などは、安倍晋三首相が10月の消費税率10%引き上げを決定し、噂される今夏の衆参同日選挙は回避の方向で動いていると観測記事を出した。だが、この観測が正しいかどうかはもちろんわからない。

 筆者は、嘉悦大の高橋洋一教授と月刊誌『WiLL』(2019年7月号)で、消費増税が実施されるか否かについて、いくつかの政治的シナリオを具体的に提起しながら対談した。高橋教授も筆者も、一つの可能性として、安倍首相が外交的な成果によって支持率を高め、消費増税を延期せずに参院選だけを行う可能性を議論した。

 対談はトランプ米大統領の訪日前に収録されたので、そのときの外交上の成果は、安倍首相が訪朝して拉致問題などで進展を見ることを念頭に置いていた。今日では、イラン訪問による米国との仲裁役や6月の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で議長を務めたことによるイメージアップが具体的に上げられる。

 一方で、野党全体の支持率が上がらない中で、あえて政治的リスクの高い衆参同日選を採用するメリットがないという判断も可能性としては高い。もちろん、可能性の問題で言えば、消費増税を延期して、衆参同日選を行うことも消えていない。つまり、実際にどうなるかはわからないということだ。
ツゲの木(中央)の記念植樹を終え、写真撮影に応じる麻生財務相(右から3人目)ら=2019年6月5日、財務省
ツゲの木(中央)の記念植樹を終え、写真撮影に応じる麻生財務相(右から3人目)ら=2019年6月5日、財務省
 経済評論家の上念司氏は、文化放送『おはよう寺ちゃん活動中』で、6月第3週前半で安倍首相からアクションがあるのではないか、と見通しを述べていた。いずれにせよ、まもなく安倍首相の判断が行われることは間違いない。