MMTについては、別の論説で詳細に解説したのでそちらを参照にしてほしい。MMTを簡単に一言で言うと「インフレにならない限り、政府の財政赤字は問題にならない」ということだ。

 だが、実践的な面でも理論的な面でも、実に粗い主張である。また、MMT支持者側からの具体的なモデル化がほとんどない。そのため主張の詳細がよくわからないという不可思議な話にもなっている。

 日本におけるMMTの支持者代表が、経産官僚で評論家の中野剛志氏だ。ただ、中野氏の論説もかなり粗いように思える。

 例えば、ある論説の中で「日本はデフレですから、『MMTは、今の日本には効果的かもしれない』とラガルドは考えているということになります」と中野氏は述べている。ラガルドとは、国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏のことだ。

 ところが、4月11日に行われたIMFの会見原文を読めば、ラガルド氏がMMTを明白に否定していることがわかる。むしろ、短期的には有効に見えても、それは維持可能な政策ではないという趣旨で批判している。

 しかも、「日本を含む世界の国の中で、このMMTが当てはまる状況にある国はない」とも明言しているのである。中野氏のように、MMTを肯定的に述べる文脈で自分の発言が利用されたと知ったら、ラガルド氏はさぞ驚くことだろう。

 いずれにせよ、MMTが政策として採用されることはないだろうし、その方が幸運だろう。だが、実際には、MMTをはるかに超えるトンデモ経済論が、日本で実施されていることの方が深刻だ。
記者会見するIMFのラガルド専務理事=2019年4月11日、ワシントン(共同)
記者会見するIMFのラガルド専務理事=2019年4月11日、ワシントン(共同)
 トンデモな人たちによる最悪のトンデモ理論、それは財務省の緊縮路線である。この財務省のトンデモな驕りを決して甘やかしてはならない。