しかし、事はその程度の話で、ワイドショーが喧伝(けんでん)するような「年金不安」や「年金破綻」といった年金制度の構造的問題とは、ほとんど関係ない。本当に「年金不安」が課題であるならば、日本経済を安定化させることが年金財政の健全化にも貢献する。

 ましてや、筆者も目にした「年金返せ」という政治的な運動は、いったい何をしたいのだろうか。意味がよくわからない。取りあえず、年金の納付額と受け取り見込み額などを知らせる「ねんきん定期便」が自分のところに届いたら、確認することをお勧めする。

 この「老後に2000万円不足」報道には、さらにメディアと安倍政権打倒の思惑がクロスして働いているようにも思える。政権を打倒したければ、代替的な政策で迫るのが本筋だと思うが、単に揚げ足取り的な手法で、政権へのダメージだけを狙っているようにも思える。

 要するに、一部野党が間近に迫った参院選での争点化を狙って、あたかもメディアとタイアップしているように思える。民主党政権誕生のきっかけになった「消えた年金」問題の「二匹目のドジョウ」というわけだ。まったく国民もなめられたものだと思う。

 ひょっとしたら、財務省の思惑も絡んでいるかもしれない。金融庁が財務省の「植民地」であることは周知の事実だ。財務省は、年金不安をあおることによって、不安解消のための消費増税を国民に定着させたい。

 現時点では、10月に予定されている消費税率の10%引き上げが話題だ。だが、財務省は今後も消費税のさらなる引き上げを狙っていることは明瞭である。
2019年6月、野党6党派の合同集会であいさつする立憲民主党の辻元国対委員長
2019年6月、野党6党派の合同集会であいさつする立憲民主党の辻元国対委員長
 最終的には消費税を26%まで引き上げようとしている。これは財務省からの出向者によって策定されたと思われる、経済協力開発機構(OECD)の対日経済審査報告書に記載されている数字からもうかがえる。

 ちなみに21世紀初頭では、財務省の目標値は18%程度だったので、どんどん切り上がっている。この増税路線を放置しておけば、そのうち消費税率30%超えの声も財務省から遠慮なく出てくるだろう。