2019年06月17日 15:25 公開

ラッセル・ホッテン、BBCニュース、ニューヨーク

日産自動車の資金を不正に私的流用した罪などで起訴された、同社前会長カルロス・ゴーン被告の妻キャロル氏(52)がBBCのインタビューに応じた。キャロル氏は、自らの関与が疑われていることに強く抗議するとともに、今月大阪で開かれる主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、ゴーン氏が置かれている厳しい状況が問題視されることへの期待を表明した。

ベイルート出身のキャロル氏はインタビューで、「私は3人の子どもを育てた主婦。なのに、何かたくらんでいる女のように言われている」と、日本での自分への扱いに不満をあらわにした。

キャロル氏は今年4月11日、東京地裁に呼ばれ非公開で証人尋問を受けた。ゴーン被告の事件にからむ尋問だったが、「カルロスを弱らせ、私を黙らせるために、私を事件に引きずり込むこと」が真の狙いだったと、キャロル氏は主張した。

ゴーン被告は昨年11月に東京地検特捜部に逮捕され、保釈後の4月4日早朝、都内のマンションで再逮捕された。キャロル氏が夫と会話をしたのは、このときが最後だという。

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その日は、午前5時15分に現れた約20人の捜査員によって起こされた。ショックで涙があふれ、混乱状態に陥ったという。

「捜査員たちは私たちを脅し、自尊心を傷つけようとしたのだと思う」とキャロル氏は話す。室内を移動するときは捜査員がぴたりと付き添った。シャワーを浴びるときも離れず、「女性が私にタオルを手渡す始末だった」。

トランプ大統領に介入を要請

この再逮捕の際、検察当局はキャロル氏のレバノンのパスポートを押収したが、アメリカのパスポートは発見できなかったという。そのため、キャロル氏はアメリカのパスポートでフランスへと出国し、エマニュエル・マクロン大統領に支援を要請。次にアメリカに渡り、ドナルド・トランプ大統領に介入を求めた。

キャロル氏によると、両政府とも「できることはすべてしている」と言ったという。キャロル氏は今後、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領に対しても、ゴーン被告の事件を取り上げるよう願い出る予定だという。

キャロル氏は現在、今月28日に大阪で始まるG20サミットで、ゴーン被告の置かれた状況が話題となるよう、運動を繰り広げている。

面会すらできない

キャロル氏は、65歳のゴーン被告の健康をますます心配し、面会が許可されないことへの怒りを表した。

「私の話すことはすべて夫の裁判で不利にはたらく恐れがあるからと、弁護士には黙るように言われている。でも、私は夫に帰ってきてほしい。一緒にいてほしい。夫は無実だ」と訴えるキャロル氏は、このインタビューを受けながら何度となく涙をこらえた。

昨年11月の最初の逮捕から今年3月に保釈されるまでの108日間は、ゴーン被告は暖房設備のない独居房に入れられ、食事が不十分な状態で、長時間にわたって弁護士の立ち会いなしで取り調べを受けたと、キャロル氏は話した。

保釈された日、「夫の顔色は黄色く見えた。日光を浴びていなかったから、黄だんが出ているのかと思った」とキャロル氏は言い、ゴーン被告がやせ細って、精神的に疲れ果てていたと話した。

「夫を排除する謀略だ」

ゴーン被告は逮捕前、フランスの自動車会社ルノーによる日産の合併を検討し、日産側から激しい抵抗を示されていた。キャロル氏は、日産がゴーン被告と敵対するようになったのは、そのことが理由だとし、「夫を排除しようとする謀略だった」と訴えた。

そしてそれが、ゴーン被告が公正な裁判を受けられない理由だと強調した。

日産自動車はこの謀略の主張を強く否定している。

「刑事事案とは別に、日産の社内調査では不正行為に関する多数の有力な証拠が見つかっています。弊社の取締役会はそれを根拠に、ゴーン氏とケリー氏の会長職、代表取締役職の解任を全会一致で決議し、また両名は先日の臨時株主総会にて取締役職からも解任されました。ゴーン氏の不正に関する情報は、その他にも次々と発見されています。現在、日産は再発を防止するべく、このような不正を容認する原因となった脆弱なガバナンスの改善と、業務の安定化、経営体制の強化に真摯に取り組んでいます」と、日産はBBCの取材に答えた。


「裕福かどうかは関係ない」

裕福で恵まれた夫婦が特別な待遇を求めているという見方に対しては、キャロル氏は、「私たちは傷ついている。被害を受けている。それに、裕福か貧しいかに関係なく、基本的人権は守られるべきだ」と反論した。

ゴーン被告の置かれている状況や、裁判が来年まで始まらない見通しを説明すると、聞いた人は本心から驚くとキャロル氏は言う。ゴーン被告は現在、再び保釈となっているが、裁判所指定の住居で厳しい条件下の生活を強いられ、カメラで24時間監視されている。日本国外への出国は認められていない。

「状況はひどいけれども、知らない人も支援の手を差し伸べてくれた。見知らぬ人の助けが、とてもうれしかった」

「人質司法」を糾弾

キャロル氏は、自分の行動がせめて、「人質司法」と呼ばれる日本の司法制度(長期にわたって厳しい環境で拘束し自白を強要していると批判されている)が問題視されることにつながってほしいと願っている。

「(日本の司法制度は)非人道的で残酷だ」

キャロル氏は国連に、人権侵害への対応を求める2件の嘆願書を出している。これは、司法制度改革を訴える日本の弁護士たちにも支持されている。

生活はつらく、さびしいとキャロル氏は言う。「不安だし、心配している。今回起きたことは悲劇だ」。しかし、引き下がるつもりはない。「何かが不当だと分かれば人は怒り、もっと闘おうと思うものだ」。

(※BBCはアメリカ・ワシントンの日本大使館にコメントを求めた)

(英語記事 Carole Ghosn: 'I'm not a conniving woman'