上久保誠人(立命館大政策科学部教授)

 約1年ぶりに国会で党首討論が開催された。立憲民主党の枝野幸男代表、国民民主党の玉木雄一郎代表、日本共産党の志位和夫委員長、日本維新の会の片山虎之助共同代表の、野党4党首が衆参両院の国家基本政策委員会の合同審査会に次々と登壇し、安倍晋三首相を追及した。だが、野党の追及は迫力を欠き、議論も深まらなかった。

 また、安倍首相に解散を迫ることもなかった。唯一、最後に討論に立った片山氏が「他の党首が言いたくても言えないのか、言いたくないのか。解散はこの国会でされるのか」と、皮肉を込めながら尋ねただけだった。首相は「解散という言葉は私の頭の片隅にはございません」とかわした。

 野党が迫力不足だったのは、安倍首相を挑発して「逆ギレ」されて、「衆院解散カード」を切られることを恐れたからだ。だから、無難な質問に終始してしまった。

 最もひどかったのは玉木氏だ。付箋がついた金融庁金融審議会の報告書のコピーを安倍首相に渡そうとしたが、首相に受け取ってもらえず、空振りとなった。

 ユーモアにならず、場が白けただけではない。本気で政権を取る気はないということを国民に思い切り見せつける、陳腐な「パフォーマンス」になってしまった。

 ところが、党首討論が終わって目の前から安倍首相がいなくなるや否や、急に野党は強気になった。枝野氏が「首相が質問に正面から答えなかったのは不誠実だ」と厳しく批判し、衆院で内閣不信任案の提出を検討する考えを示したのだ。

 枝野氏はそれまで、衆院解散を誘発する可能性があるため内閣不信任案の提出は見送る方向のはずだった。ところが、他の野党に押されてしまい、考えを翻した。
2019年6月、安倍首相との党首討論で金融庁の報告書を麻生財務相兼金融相(右)に渡そうとする国民民主党の玉木代表
2019年6月、安倍首相との党首討論で金融庁の報告書を麻生財務相兼金融相(右)に渡そうとする国民民主党の玉木代表
 しかし、首相がいない場所でこそこそ陰口をたたくように批判しても、しょぼすぎるではないか。首相に面と向かって「安倍政権には民意はない。国民に聞いてみようじゃないか!解散しろ!」と言い放つド迫力がなければ、国民の心には何も響かない。

 政治は論理だけで動かせるものではない。かつて、小泉純一郎首相が、参院で郵政民営化法案を否決されたときのことを思い出してほしい。小泉首相は、テレビに向かって「国民の皆さんに聞いてみたい。郵政民営化は是か非か!」と力強く訴え、衆院解散・総選挙を断行した。