田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 「野党は本気で消費増税を凍結しようとしている!」「野党は本気で反緊縮政策をやろうとしている!」。選挙が近くなると、インターネット上ではこのような意見を頻繁に目にするようになる。

 私はそのような意見に極めて懐疑的だが、そのような考えを表明すれば、「おまえは緊縮主義者だ!」とレッテルを貼られ、誹謗(ひぼう)中傷の言葉まで浴びせられることが結構な割合で起きる。選挙というか政治に振り回される人たちは昔も今も多い。

 主要野党が本当に10月の消費税率10%引き上げにストップをかける気があるのだったら、19日の国会での党首討論はその絶好の場だった。安倍晋三政権は消費増税を今のところ実施するつもりだし、立憲民主党と国民民主党、日本共産党は、ともに消費増税に反対を表明している。

 消費増税を論点にして、実施の是非を問うには最大の見せ場であったはずだ。3党がタッグを組んでいけば、「消費税解散」に持っていくことさえもできたかもしれない。

 だが、党首討論で各党が主要なテーマとしたのは、いわゆる「老後2000万円不足」問題という年金の話題だった。世論調査では年金や社会保障の問題への関心が高いこと、また過去の「消えた年金」問題を契機にした政権交代の「うまみ」が忘れられないのか、野党陣営によるこの問題への執着は強いものだった。

 「老後2000万円不足」問題については、先週のこの連載で解説したように、年金制度自体の構造的問題ではない。もっぱら、マスコミの報道の仕方やそれに便乗した政治勢力の選挙向け「プロパガンダ」といっていい。
2017年11月、衆院本会議後に立憲民主党の枝野幸男代表にあいさつする安倍晋三首相(右、宮崎瑞穂撮影)
2017年11月、衆院本会議後に立憲民主党の枝野幸男代表にあいさつする安倍晋三首相(右、宮崎瑞穂撮影)
 日本経済の先行きが悪化していく中での消費増税こそは、選挙の最大の争点になるはずだ。その争点を口では「凍結」「廃止」「延期」などと野党が叫んでいても、本気度はあいかわらず極めて低い、というのが実情だろう。