石渡嶺司(大学ジャーナリスト)

 東京福祉大学(東京都豊島区)から大量の留学生が消えたことが問題になったのは、2019年3月のことであった。以来、改めて留学生制度の問題点などが大きな話題となったので、本稿でも振り返りたい。

 実は、留学生の大量失踪事件は東京福祉大が初めて、というわけではない。2001年には酒田短大(山形県)で中国人留学生の不法就労が事件化し、3年後には廃校となった。この問題以降も、大学や短大、専門学校で同様の事件が起きている。

2001年 七尾短大(石川県)で14人が失踪→2004年廃止
2002年 萩国際大(山口県)で中国人留学生の除籍、風俗店などでの不法就労が発覚→2007年に改称、2014年にも再改称(現・至誠館大)
2004年 城西国際大(千葉県)で220人の「幽霊学生」疑惑が浮上
2011年 青森大(青森県)で約140人の留学生が大量除籍
2018年 日中文化芸術専門学校(大阪府)で大量除籍。ベトナム人留学生7人が学校側を提訴
2018年 西日本新聞が九州の私立大37校を調査。過去5年の留学生4551人中、卒業以外の理由では20・1%が除籍・中退(2018年1月8日朝刊「留学生2割消えた 九州私大37校の退学・除籍 受け入れ急増で「ひずみ」も 少子化穴埋め焦る大学」)
2019年2月 東海学院文化教養専門学校(茨城県取手市)が定員3倍超の外国人留学生を受け入れ。入学予定の留学生の在留許可を取り消し
2019年3月 東京福祉大の留学生(研究生)3200人のうち、約700人が所在不明となり問題化
2019年6月 保育・介護・ビジネス名古屋専門学校が定員超過の疑いから県と出入国在留管理庁が立ち入り調査(同校は東京福祉大のグループ校)


 過去に同様の事件を起こした大学や短大、専門学校はいずれも正規の学生であった。これに対して、東京福祉大の場合、何よりも規模が過去の事例とは比較にならないくらい多い。

 さらに、注目したいのが研究生という制度である。大学と短大は言うなれば文部科学省の許認可事業であり、「大学設置基準」が定められている。大学設置基準は、正規学生の収容定員を定めて、そのためのキャンパスや施設、設備から教員までを固め、これに違反した場合、補助金の減額などのペナルティがある。

 ところが、この基準では、研究生を含む非正規学生はそもそも大量に入れる、ということが想定されていない。研究生は聴講生や科目等履修生と同じく、正規学生になる前の、言わば「慣らし運転」的な位置づけだ。そこまで多く入ることを文科省が想定しておらず、結果的に東京福祉大はこの盲点をうまく突いた、ともいえよう。

 文科省と4月に発足した法務省の外局、出入国在留管理庁は東京福祉大の不明留学生について、2016年から18年度の3年間で約1600人に上るとする調査結果を公表した。公表結果を受けて、文科省は東京福祉大に、7月中に留学生の在籍管理などに関する改善計画の提出を求めている。

 さらに、当面は新たに入学する学部研究生への在留資格(留学)付与を認めない方針も示した。2008年の福田康夫内閣以降、留学生受け入れは国策となっているが、文科省が、大学などに対して留学生受け入れの制限を求めるのはこれが初めてだ。
文部科学省(ゲッティイメージズ)
文部科学省(ゲッティイメージズ)
 もっとも、研究生制度の悪用が判明した以上、東京福祉大に対する受け入れ制限方針は当然ともいえる。ただし、研究生制度を悪用しているのは東京福祉大だけではない、との風聞がある。今後、文科省の調査などで明らかにすべきであろう。

 合わせて必要なのが、「まさか大量に受け入れなどするはずがない」という性善説に立った研究生制度にメスを入れることだ。大量受け入れの際の罰則や、教育内容の事前確認など制度改革を進めることが、国や文科省には求められる。単に東京福祉大を罰するだけでは、他の大学などで同じ事件が起こるに違いないからだ。

 今回の東京福祉大の問題では、大学教育における質の低下や、経営状態の悪さを指摘する意見もあった。