田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 日本で初開催となった20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)での米中首脳会談から、衝撃的な米朝首脳会談の実現。この数日、トランプ米大統領の「政治ショー」に世界がくぎ付けになった。

 トランプ大統領がツイッターを政治手法として採用してから、数年になる。その中でも、今回の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長への対談の呼びかけと成功は、旧来のメディアを中心にしている多くの人たちこそ衝撃的だったろう。

 日本では、その旧来型メディアを利用した政治的な「印象報道」が極めて多い。その中から、政策当事者の発言という1次ソースに、多くの人たちが直接触れることのできる会員制交流サイト(SNS)は、旧来型メディアの濁ったフィルターを通さずに、個々の人たちが自由に判断できるだけに便利だ。

 しかも、単に政策当事者の発言を真に受けるだけではなく、瞬時にさまざまな異論や反論が現れ、それがまた多くの人に可視化されていく。もちろん、政治的・文化的な分断の可能性は常に存在するが、それでも人々がSNSの使用をやめないのは、メリットの方が純粋に大きいからだ。

 今回のG20でも、旧来型メディアの「印象報道」は強力に展開した。また新聞やテレビだけではなく、それらのマスコミ各社のSNSや、それに連動するかのように、識者たちの発言も注目を集めた。

 私が注目したのは、TBS系列の番組『新・情報7DAYS ニュースキャスター』で同局の安住紳一郎アナウンサーが、G20での安倍晋三首相の動向を伝えたときである。安住アナは、「安倍さんの首相動向を調べたんですけど見てください。テレビ、マスコミで政権与党の事を褒めるといろいろお𠮟りを受ける向きもあるんですけど、安倍さんお疲れさまでした」と、その分刻みの過密スケジュールをこなした首相の行動を評価したことだ。
G20大阪サミットで行われた女性活躍推進のイベントに出席する、安倍首相(左)、トランプ米大統領(右)と長女のイバンカ大統領補佐官=2019年6月29日午前、大阪市(ロイター=共同)
G20大阪サミットで行われた女性活躍推進のイベントに出席する、安倍首相(左)、トランプ米大統領(右)と長女のイバンカ大統領補佐官=2019年6月29日午前、大阪市(ロイター=共同)
 安住アナの素朴な感想は妥当なものだろう。だが、それさえも「お𠮟りを受ける向き」を意識しないといけないようだ。マスコミが政府の広報になる必要はないが、他方で「政府批判ありき」では偏った報道になってしまうだろう。