著者 daponte(東京都)


 2013年の年初時点で「リフレ政策の目標として物価上昇2%の達成時期を2年以内とするが、状況によっては6年後(2019年)までは許容する」と政策当局が言明したと仮定してみよう。100人中99人は「それはないだろう」と言うに違いない。しかし、それが今現実になっている。普通の個人間の約束にしても、会社の株主総会の施策目標にしてもこんな約束が認められることはまず絶対にない。

 そもそも政府や日銀が立てる目標の重要性は問わなくてよいとでも言うのだろうか。その反対である。あるいは経済政策の目標は単なる願望なり、気楽な予想でもよいということなのだろうか。そんなバカなことはない。特に財務省幹部や日銀総裁・副総裁クラスの幹部の責任は重大だ。

 バブル期以降20年を経過してもデフレからの脱出は未だなされていない。この間に失われた国富の総額は1千兆円にもなろうとの試算がある。また、世界的にみてもこの20年間のわが国の経済成長率はほぼゼロであり、先進国の中で最下位である。どう見たってこれでだれも責任を取らず、しかも日々偉そうなことを宣っているのは実に不思議な現象である。国民は徹底的に甘く見られている。

 マネタリーベースを増加させれば、マネーサプライも歩調をあわせて増加し、それが民間の資金需要を充足して設備投資の増加につながるものとされていた。しかし、そうはならなかったし、当初からそうはならないとの観測・主張もあった。民間企業がもともと確かな売上げ・収益をもたらす優れた投資対象を持っていて、かつ保有の資金に不足がある場合には、マネタリーベースの増加がその資金需要を満たすであろう。

 ところが、すでに1990年代において、事態はまったく逆になっていたのだ。こんな循環は起こりようがなかったのである。財務省・日銀などの政策当局、学者、マスコミなどはそれに気が付いていなかったし、今でも分かっていないようだ。また、経済界は損得だけで判断するので全然存在意義がない。

 資金供給があれば投資が増加するのではない。投資需要が先に存在しなければ、何も起こらない。単に日銀当座預金残高が増加するだけだ。普通に実世界で活動している人々にとっては当然至極のことで議論の余地がない事柄なのである。

 どうしてこんな簡単なことが分からないかというと、政策当局、学者、マスコミなどの幹部がいわば「アホ」だからである。実態を知らないのだ。また、財務省、日銀の緊縮財政主義、インフレ嫌いでデフレに甘い気質、さらには彼らの特権意識・縄張り意識が強く影響している。
霞が関の官庁街=2017年2月、東京都千代田区(産経新聞チャーターヘリから、桐原正道撮影)
霞が関の官庁街=2017年2月、東京都千代田区(産経新聞チャーターヘリから、桐原正道撮影)
 彼らは天下の東大を上位の成績で卒業しており、中にはアメリカの有名大学で学位を取っている者も少なくない(でもそれが何だというのだろうか。東大やハーバード大の教育や経済理論が優れているのならば、2008年のリーマン・ショックのような混乱は起きなかったはずである)。

 こうした彼らの上等な学歴がかえって仇になっている。彼らは現実経験が乏しい一方で、理論らしきものにすがり付き、またアメリカの学会の動きにすぐに同調する。エリート意識は人一倍強く、他の人々の意見や観測をバカにしているのだから困ったものである(ただ彼らのエリート意識をこれほどまでに育ててしまったのは他ならぬわれわれ国民と朝日新聞・岩波書店などを代表とする言論界なのだ)。

 誠に遺憾ながらアベノミクスをめぐるこの7年間の政界、官界、経済界、言論界、学界などの行動・主張を仔細に見るとこのような動きが浮かび上がってくる。