2019年07月03日 16:47 公開

アメリカのトランプ政権は2日、2020年の国勢調査で、米市民権(国籍)の有無を尋ねる質問を追加する計画を取りやめると表明した。人権団体は、マイノリティー(人種的少数派)世帯の回答率が低下する可能性があると批判していた。国勢調査は選挙区割りや、連邦資金の分配などの指標となるもので、来年の大統領選に向けて、与党・共和党に有利な選挙区割りにすることが政府の目的ではないかと言われていた。

米連邦最高裁判所は先月27日、マイノリティー保護の強化のためだとする政権側の主張は「不自然」で、政府は十分な根拠を示していないとして、市民権に関する質問追加を一時保留する判断を賛成5、反対4で示していた。

アメリカの国勢調査は10年ごとに行われる。ここに国籍質問を加えると、主にラテン系やアフリカ系が回答に消極的になり、その結果、数百万人が人口に含まれなくなるのではないかと、野党・民主党は人権団体は懸念していた。

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ドナルド・トランプ大統領は当初、最高裁に提出する法的根拠を準備するために時間稼ぎに、国勢調査の実施延期を求めていた。しかし、最終的に政権側がこの計画を取り下げることとなった。

ウィルバー・ロス米商務長官は声明で、「国勢調査局は、市民権に関する質問が含まれていない質問事項の印刷作業を開始した」と述べた。

トランプ大統領は、計画取り下げを受け、立て続けにツイッターに投稿し、「アメリカにとって非常に悲しい時だ。合衆国の最高裁が、『この人物は合衆国市民か?』という質問を2020年国勢調査で認めないなんて! ずっと前から続いているのに」と書いた。

市民権をめぐる質問とは

「この人はアメリカ合衆国の市民ですか?」

この質問は、1970年から2000年の間に住民の一部に対して限定的に、何度か使われた。しかし、1950年以降、全国民に適用されたことはない。

国勢調査は、各州に投じる連邦資金額の決定など、政府にとって選挙区割を決める上で役に立つ。

選挙を見据えた政治的思惑

2020年国勢調査に市民権に関する質問を追加する計画が法廷闘争へともつれ込んだのは、その根底にある動機が原因だ。

ホワイトハウスは、質問追加の計画には実用的な理由があると主張。トランプ大統領は先月、記者団に対し、「国勢調査で、誰に市民権があり、誰に市民権がないのか、そういうことへの回答が認められていないなんて、あまり良いこととは僕には思えない」と述べた。

一方で、市民権に関する質問を追加する計画には政治的思惑があり、移民や人種的少数派からの回答を抑圧する可能性があるとの批判が上がった。

マイノリティーの回答が減り、住民として数えられるマイノリティが少なくなれば、選挙区割りや、州ごとの予算配分などを決めるにあたり、確実に共和党が恩恵を受けることになる。

民主主義への脅威

カリフォルニア州やニュー・メキシコ州など移民人口が特に多い州は、国勢調査で住民の数が実際よりも少なく数えられるリスクが大いにある。こうした州は、民主党を支持する傾向にある。

こうした各州でマイノリティーからの回答率が減少すれば、選挙区の再編につながり、民主党を支持しがちなマイノリティー世帯への予算配分が減り、選挙での影響力も打撃を受ける。

最高裁判事の1人は、市民権に関する質問の追加計画は、アメリカの民主主義の「基盤そのものに対する」脅威だと指摘していた。

(英語記事 Trump drops plan for census citizenship question