櫻田淳(東洋学園大学教授)

 6月25日配信の米ブルームバーグ通信は、米国のドナルド・トランプ大統領が「日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていた」と報じた。これに関連して、同月27日の時事通信の記事によれば、トランプ氏が米FOXビジネステレビの電話インタビューで、日米安全保障体制に関して、「日本が攻撃されれば米国は彼らを守るために戦うが、米国が支援を必要とするとき、彼らにできるのは(米国への)攻撃をソニーのテレビで見ることだけだ」と述べた。

 インタビューで、トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)に関しても「米国は(国防負担の)大半を払っているのに、ドイツは必要な額を払っていない」と指摘した。トランプ氏は、大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)開幕直前に豪州のスコット・モリソン首相と会談した際、「われわれ(米国)は、同盟諸国に善意を示し、同盟諸国と協働し、同盟諸国の面倒を見てきた」と語った。

 トランプ氏の「米国が一方的に同盟運営の負荷を担っている」という認識は以前から示されてきたものであり、それ自体は何ら驚くに値しない。もっとも、トランプ氏の同盟認識がどのようなものであれ、それが米国の「国家としての意志」を反映するわけではない。

 事実、6月27日、米連邦議会上院は、2020年会計年度の国防予算の大枠を定めた「2020年国防権限法案」を可決した。法案の骨子は「日米同盟への支持を表明する」とした上で、「日本の意義深い負荷分担と費用負担への貢献を認識する」としつつ、「強化された日米防衛協力を促進する」としている。

 加えて、法案は「日本政府との協議の上で、インド太平洋地域における米軍部隊の展開配置を再考するように求める」としている。立法府優位の米国の国制を鑑みるに、こうした法案に示された同盟認識の意義は重い。

 果たして トランプ氏は大阪G20閉幕後の記者会見で、日米安全保障条約に関して「破棄する考えは全くない」と述べ、前に触れたブルームバーグ通信の報道内容を否定した。
共同記者会見で質問に答えるトランプ米大統領=2019年5月、東京・元赤坂の迎賓館(代表撮影)
共同記者会見で質問に答えるトランプ米大統領=2019年5月、東京・元赤坂の迎賓館(代表撮影)
 ただし、なぜ、トランプ氏が現時点で持論を蒸し返すような発言を繰り返したのか。一つの仮説は、イラン情勢への対応に際して、米国と他の「西方世界」同盟諸国との温度差が露わになり、そのことに対するトランプ氏の不満が噴出したというものである。