それでは今回の措置を強めることで、日本はその目的を達成することができるのであろうか。考えなければならないのは、仮に今回の措置が経済制裁と言える内容を持つ場合、その制裁が政治的効果を持つには、最低限、次の二つの条件が必要だ、ということだ。すなわち、第一には制裁が実際にその国の経済に影響を与えることであり、第二はその経済の影響がその国をして相手国への譲歩を促すような効果を持つ、ということである。

 既に明らかなように、事態が先に示した二つのシナリオのうちの一つ目、すなわち、今回の措置が短期的かつ限られた影響しか持たない場合には、韓国が日本への譲歩に「追い込まれる」ことは考えにくい。7月3日の時点で、韓国政府は関連業界に対する大型投資の支援を表明しており、その措置は主として国内企業の活動を支援するものになるだろう。

 それでは事態が二つ目のシナリオ、つまり日本からの特定産品に関わる流通が長期的に阻害された場合にはどうなるだろう。

 この場合にも先に述べたように、それが経済全体に与える影響が小さければ、やはり当該業界に対する支援で事足りてしまうから、韓国政府が積極的な外交的対応を行う理由にはなり得ない。この結果、韓国政府から支援を受ける韓国企業は自らの設備投資などを行うことにより、短期的には苦しんでも、中長期的には新たなサプライチェーン(部品の調達・供給網)を作り上げてしまうことになるだろう。それでは単に日本企業が自らの市場をみすみす失うだけの結果に終わることになる。

 事実、東日本大震災による影響で日本からの部品供給が途絶えたことを受けて、韓国の一部業界ではサプライチェーンを切り替えている。今回、韓国企業は政府からの支援を受けることもあり、時間は必要になるものの、最終的には同じ展開になる可能性が強い。
日本政府の韓国向け輸出規制強化を1面トップなどで伝える韓国紙=2日、ソウル(共同)
日本政府の韓国向け輸出規制強化を1面トップなどで伝える韓国紙=2日、ソウル(共同)
 だとすると、事態が一定の政治的な効果を持つには、日本からの特定産品に関わる物流が長期にわたり阻害され、かつそれが経済的にも大きな影響を与えた場合に限られることになる。しかしながら、問題はこの状態もまた、韓国政府が歴史認識問題などにおいて日本への譲歩に向かう「十分条件」にはなり得ないことだ。