田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 いわゆる「韓国輸出規制問題」が生じてからというもの、日本のマスコミや識者の意見を分析していると、ゲームの「ルール」が明らかに変わったことが分かる。その一方、日韓の「政治ゲーム」のルールが変更されたにもかかわらず、従来と同じ次元で、どう考えても韓国びいきな価値観をあらわにしている韓国専門家がいる。

 また、安易に「友好」を持ち出して、日本側からの非合理的な妥協を口にするジャーナリストがテレビで発言していたりする。この人たちは、ゲームのルールの変化に適応するのに失敗している思考の「守旧派」と言える。

 ゲームのルール変更について、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者でニューヨーク大のトマス・サージェント教授は「レジーム転換」と形容した。サージェント氏は「人間の行動を規定するものはゲームのルールである」と述べている。ゲームのルールが変われば、人間の行動も変化する。

 野球のルールが変更されたとしよう。もし、攻守交代がスリーアウトではなくフォーアウトで行われるなら、野球選手の行動も当然変わることになるだろう。実は、サージェント氏が提唱する以前の経済学では、そのようなゲームのルール変更を政策分析に明示的な形では入れていなかった。

 サージェント氏は、ある特定のゲームのルールを選択することを、「レジームの選択」と呼んだ。また、あるレジームから他のレジームに変更することを「レジーム転換」と表現したのである。

 サージェント氏はレジーム転換を経済学上で考えたが、政治的な現象にも広く応用できるものだ。今回の韓国への輸出規制問題は、まさにレジーム転換と言えるだろう。

 改めて韓国への輸出規制問題を説明すると、20カ国・地域(G20)首脳会談(サミット)明けの7月4日に、フッ化ポリイミド、レジスト、エッチングガス(フッ化水素)の化学製品3品目に関して、簡素な輸出手続きをやめて、契約ごとの輸出認可方式に切り替えたことを指す。
韓国メーカーの半導体製品
韓国メーカーの半導体製品
 これら3品目は軍事転用が可能な戦略的物資だが、安全保障上の友好国への優遇措置として手続きを免除していた。だが、不適切事案の発生や、また韓国側に呼び掛けていた協議の提案を無視され、信頼関係を損ねたことが、今回の輸出認可方式の変更を招いたわけである。