2019年07月10日 12:11 公開

イギリスのジェレミー・ハント外相は9日、アメリカのドナルド・トランプ大統領について、英首相と英国に対して「無礼だ」と批判した。

トランプ氏が同日、ブレグジット(イギリスのEU離脱)への対応をめぐって、テリーザ・メイ英首相のことを「独自の愚かな道」を進んだとツイートしたことを受けたもの。

トランプ氏は、サー・キム・ダロック駐米英国大使(65)についても「頭がいかれている」などとこき下ろした。ダロック氏は本国への極秘公電の中で、米政権を「無能」と酷評していたと報じられている。

英国と英首相への「無礼」

このトランプ氏のツイートを受けて、イギリスの与党・保守党党首選に立候補しているハント外相は、「友人というものはざっくばらんに話すものだ、だから私もそうする。(トランプ氏の)一連のコメントは、我々の首相や私の国に対して無礼であり、間違っている」とツイートした。

その上で、「米外交官は、自分の私見をマイク・ポンペオ米国務長官に報告しており、我々の外交官も同じことをしている!英米同盟は歴史上最も素晴らしい同盟だという大統領の意見には、私は賛成だ……」

https://twitter.com/Jeremy_Hunt/status/1148626614479130625

「……しかし、メイ首相がこれまで常に、トランプ大統領にしてきたように、同盟国は互いに敬意を持って接する必要がある。外交官は英政府から任命を受けており、私が首相になった場合、外交官は現在の職に留まる」と続けた。

https://twitter.com/Jeremy_Hunt/status/1148626829684744192

ダロック氏の駐米大使の任期は、今年のクリスマスまでとなっている。

9日に予定されていたリアム・フォックス英国際貿易相とウィルバー・ロス米商務長官との会談はキャンセルとなった。

「頭のいかれた大使」を押し付けられた

トランプ氏は連日、ツイッターで、ダロック氏に対する痛烈なコメント投稿している。批判はメイ首相にまで飛び火している。

9日の投稿では、メイ氏が自分のアドバイスを無視して、「独自の愚かな道」をたどったと食ってかかった。さらに、「イギリスがアメリカに押し付けてきた頭のいかれた大使は、我々が感激するような人物ではなく、非常に馬鹿なやつだ」と悪態をついた。

「大使は失敗に終わったブレグジット交渉について自国やメイ首相に話をすべきであり、ブレグジットがいかにひどいことになったかについての私の批判にイライラすべきではない」

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1148559442885185536

「私はメイ首相に、どう合意するのか教えたのに、彼女は独自の愚かな道をたどり、実現できなかった。惨事だ!私は大使のことは知らないが、彼は気取った間抜けだと聞いている。アメリカにはいま、世界のどこよりも圧倒的に素晴らしい経済力と軍事力があると、大使に伝えてくれ…」

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1148559443845668864

トランプ氏は8日にも、「私は、イギリスやテリーザ・メイ首相のブレグジットへの対処方法について、ずっと非常に批判的な立場だ。首相や閣僚が生み出した混乱はメチャクチャだ。私は首相にどうすべきかを伝えたが、彼女は別の道を辿る決断を下した」とツイートしている。

英与党党首選にも影響か

ハント氏は9日、決選投票で一騎打ちとなるボリス・ジョンソン前外相と、テレビ討論に出演した。

首相就任後にダロック大使を現在の職に留めるかどうかについて、回答を迫られたジョンソン氏は、自分がそういった判断を下せる立場にあると想定するほど「厚かましくはなれない」と述べた。

ジョンソン氏は、自分はホワイトハウスと「良い関係」を築いており、アメリカと「親密なパートナーシップ」を持つことは重要だと主張した。

BBCのローラ・クンスバーグ政治編集長は、今回の騒動は、イギリスの対米関係が「微妙で繊細な」性質のものであることや、次期英首相候補が「論争をあおる事が大好きと思われる」大統領に対処するうえで直面する課題を思い起こさせると指摘する。

「ドナルド・トランプについてよりはっきり率直に、この問題について述べたのは、普段は2人のうちでより慎重だとされるジェレミー・ハントだ。一方のボリス・ジョンソンは、ホワイトハウスと密接でいることを恥ずかしいとは思わないと述べるに留まった」

「類を見ないほど機能不全」

英紙デイリー・メールが6日に報じたところによると、ダロック大使が2017年から現在まで英外務省へ書き送ったメールの中で、今のホワイトハウスは評判通り「内部対立と混沌(こんとん)」がひどく、「類を見ないほど機能不全に陥り」、トランプ大統領の下で「分裂している」、「米政権が今後(中略)今ほど外交的にぶざまで無能ではなくなるとは、あまり考えられない」と書いている。

「相手にしない」

トランプ大統領は8日、ダロック大使について、「彼はアメリカ国内で好かれていないし、評判も良くない。我々はこれ以上、大使を相手にしない(We will no longer deal with him)」とツイートしたが、米国務省は「ホワイトハウスあるいは大統領からさらなる指示があるまでは、公認を受けている個人とのやりとり」を継続する方針を明かした。

同省は、「我々にはイギリスとの間で、非常に長きにわたり続いてきた、非常に特別で戦略的関係がある。これはいかなる個人や政権よりも重要なものだ」と付け加えた。

英首相は大使を「信頼」

トランプ大統領がダロック大使を「相手にしない」とツイートする前に、メイ首相は大使を「信頼」していると述べていた。一方で、大使の見解には同意していないとも話していた。

英首相官邸報道官は、大使は「忠実で尊敬を受けている政府高官」であり、メイ首相とトランプ大統領が今回のリークに関連して電話会談を行なう予定はないと発表した。

さらに、ダロック大使が、トランプ大統領の娘イヴァンカ・トランプ大統領補佐官とリアム・フォックス英国際貿易相による会談に、同席しないことも明らかになった。

同報道官は、「大使は会談に同席しないが、リアム・フォックスの訪米を他の方法でサポートしている」と述べた。

英首相官邸は先日、大使の報告メールが漏洩(ろうえい)されたことは「残念」だとコメントし、英米は今も「特別で永続的な」関係を共有していると述べた上で、今回のリークに関する正式な調査を開始した。

ダロック大使とは

1954年生まれのダロック大使は、キャリア外交官として42年間の経歴を持つ。国家安全保障と欧州連合(EU)政策を専門とし、「イスラム国」(IS)やロシアのクリミア半島侵攻、イラン核問題などについてデイヴィッド・キャメロン政権の安全保障問題顧問を務めた後、2016年1月に駐米大使として着任した。

(英語記事 Trump 'disrespectful' to PM and UK, says Hunt