常見陽平(千葉商科大学国際教養学部専任講師)

 最初に言っておく。私は「イクメン」「イクボス」という言葉が大嫌いである。この言葉を無神経に煽る意識高い系論者やメディアを考えるだけで虫唾(むしず)が走る。

 くれぐれも言うが、男性の育児や家事を否定しているわけではない。これらの言葉自体、男性が育児や家事に参加することを特別視していないかという点に疑問を抱いている。俗耳に馴染(なじ)むスローガンを連呼されたところで、具体的に仕事の量や、やり方を考慮しなくては、単なる労働強化になってしまうのだ。

 わが国では「働き方改革」の美名のもと、「長時間労働の是正」が行われる。このこと自体は否定しない。職場で労働者が傷つき、倒れ、死ぬ社会は最悪である。

 ただ、それが「早く帰れ運動」という単なる「時短」に矮小(わいしょう)化されている。「時短ハラスメント」まで起こっており、自死に至る者さえ現れている。

 「イクメン」「イクボス」なる言葉が流行(はや)っただけで、子育てをする家族が救われるわけではない。普遍性を装った美しい言葉による、労働者への犠牲強要の大攻撃を断固としてはねのけなくてはならない。

 この手の話をすると、「育児や家事をちゃんとやっているのか」という、個人の取り組みについて問いただす声が飛んでくる。残念ながら(?)、私は過剰なまでに育児・家事に取り組んでいる。
2019年3月、働き方改革の取り組みを視察するため、東京都中央区の「味の素」本社を訪れ、社員と懇談する安倍首相(代表撮影)
2019年3月、働き方改革の取り組みを視察するため、東京都中央区の「味の素」本社を訪れ、社員と懇談する安倍首相(代表撮影)
 保育園の送り迎えだけでなく、買い出し、料理、掃除、ゴミ捨てに取り組んでいる。洗濯は主に妻の仕事だが、たまに私も取り組む。料理などはほぼ、私の仕事だ。週末も妻の休息時間をつくるために、娘と一緒に意識的に出掛けることにしている。

 平日でも平均すると5時間弱は育児や家事に時間をかけている。このような話をしても決して尊敬はされない。むしろ、「ずっと女性がやってきたことだ、いばるな」と糾弾される。

 これだけ育児・家事に取り組んでいても、『日経DUAL』の如き意識高い系育児メディアから取材が来ることもなく、誰から褒められるわけでもなく、日々生活している。別に見せびらかすために育児や家事をしているわけではない。そもそも、育児や家事は生活のためであり、報われること、褒められることを目的としたものではないからだ。