子供が生まれてから、明らかに筆が遅くなり、連載の仕事もだいぶ減らしてしまったし、書籍を執筆するペースも落ちている。インプットの時間も減っている。いまや「兼業主夫」と名乗ることにしている。

 前置きが長くなったが、男性の育児休暇の義務化が検討されている。男性が育児や家事に参加することは賛成であり、むしろやらなければならないことである。

 ただ、この「義務化」が「手段」として適切かどうかは疑問が残る。「働き方改革」が「早く帰れ運動」に矮小化されたような、同じ道を歩むのではないか。

 さらには「イクメン」「イクボス」なるムーブメントが労働強化につながったことなどと、同じ轍(てつ)を踏んではなるまい。シンパシーの刷り込みだけでは抜本的改善を勝ち取ることはできないのだ。

 厚生労働省の「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」によると、男性の育児休業の取得率は6・16%で、前年度より1・02ポイント上昇した。上昇は6年連続となる。それに対して女性の育児休業取得率は1・0ポイント低下の82・2%だった。ここ数年、80%台前半で推移している。

 どうすれば、男性の育児休業取得率が増えるのか。この掘り下げと対策なしに、育児休業義務化をうたうのは拙速だと言える。

 これまでの取り組みについて、虚心に直視し、真摯(しんし)に省み、敬虔(けいけん)な反省を持ってから打ち手を考えるべきではないか。「だから、義務化が必要だ」という言辞は、あまりにもしらじらしいではないか。
イクボス宣言をする塩崎恭久厚生労働相と厚労省職員=2016年12月、厚労省
イクボス宣言をする塩崎恭久厚生労働相と厚労省職員=2016年12月、厚労省
 三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」によると、男性が育児休業を取得しなかった理由として「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」(27・8%)や「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」(25・4%)などが上位を占めた。なぜ、そうなるのかという根本的な原因を究明しなくてはならない。

 突き詰めると、これは「仕事に人をつける」のではなく「人に仕事をつける」、さらには人手不足をマルチタスク、ジェネラリスト型の働き方で補うという日本の雇用システムの問題に行き着くのではないか。

 そして、単に売り手市場というだけではなく、今後も若年層は減っていき、採用氷河期が続くだろう。人工知能(AI)や外国人労働者も、すぐには今ある業務を担うことができない。男性の育児休業の取得しづらさは今後も続くのではないか。