池田心豪(労働政策研究・研修機構主任研究員)

 男性に育休取得を義務づけようという議論がにわかに盛り上がっている。既に民間では市民団体が男性育休取得義務化を訴える運動を展開しており、企業の中にも男性育休取得率100%を掲げて積極的に男性社員に育休取得を促しているところもある。有名なコンサルティング会社は「男性育休100%宣言」企業を募集している。こうした熱気を受ける形で、6月5日に自民党は男性育休の「義務化」を目指す議員連盟(以下、議連)を発足させた。

 前日に発表された厚労省の「平成30年度雇用均等基本調査」(速報版)によれば、男性の育休取得率は6・16%、前年度比1・02ポイントの上昇であり、6年連続で上昇している。だが、政府が来年2020年までの目標としている13%にはほど遠い。もう一段階のてこ入れが必要、そのような問題意識を持つことは不思議ではない。

 議連の発表によれば、個人に直接育休取得を義務づけるのではなく、個人に取得を促すことを企業に義務づけることを目指すという。

 念のため確認しておきたいのだが、企業に対する育休の義務化は現行の育児・介護休業法で既に行われている。女性のみならず男性においても、労働者が育休取得を申し出た場合、企業はこれを拒否できないことになっている。しかし、労働者の申請を承認するという受け身の姿勢を企業がとっていては大幅な育休取得率上昇は見込めそうにないという主張も理解できる。

 厚労省が昨年3月に出した「今後の仕事と育児の両立支援に係る総合的研究会報告書」で紹介されている民間シンクタンクの調査結果によれば、末子出産時に自身の会社に育休制度がなかったと回答している男性は約半数にのぼる。法律を踏まえればそんなはずはないのだが、男性本人が自分は育休適用対象外であると勘違いしているのかもしれない。
男性の育児休業取得の義務化を目指す自民党議員連盟会長の松野元文科相(左)から提言書を受け取る安倍首相=2019年7月、首相官邸(共同)
男性の育児休業取得の義務化を目指す自民党議員連盟会長の松野元文科相(左)から提言書を受け取る安倍首相=2019年7月、首相官邸(共同)
 一方、勤務先に制度があり取得希望があっても取得しなかった理由としては、職場の雰囲気や人手不足、仕事の担当の問題などを挙げる回答が目立つ。職場や仕事の状況を勘案して育休取得申請を控える、そのような男性もいるのである。このような場合、労働者から育休取得申請をすることはないだろう。企業としても申請がないものは承認しようがない。