これに対して、現在出ている育休義務化論は、育休取得に向けた企業の能動的な関与を促すことを目指していると言える。だが、実は既に企業の能動的な関与を促す法規制はある。2017年10月施行の改正育児・介護休業法は、労働者個人に対する育休制度の個別周知を企業の努力義務としている。「育休制度はあるけど取らないでくださいね」というような周知は不自然と考えれば、これを努力義務から義務化することでも議連の目的は達成されそうである。

 しかし、周知されても職場や仕事の事情を勘案して取得を控えるという可能性はあるだろう。そこで、「育休取りませんか」という、より積極的な声かけ、つまり取得勧奨をしている企業もある。個別企業における男性育休義務化は、厳密に言えばこの取得勧奨である。

 次世代法に基づく「くるみん」や「プラチナくるみん」を取るための実績づくりとして、取得勧奨を企業が行っているケースもある。だが、会社から育休取得を勧められても断る社員はいるだろう。それでも全員に取らせるべきだ、女性の産後6週間のような強制休業にすべきだというのは行き過ぎである。

 育休には仕事を休んで子育てに専念できるというメリットだけでなく、所得ロスとキャリアロスというデメリットもある。

 所得ロスとは、育児休業給付が出るとはいえ、休業中は無給になるため収入は減るという不利益である。キャリアロスは休業取得中に仕事を中断することによって、将来のキャリアにつながる仕事の機会を逸してしまう不利益である。
育児の練習をする男性。男性の育児休業の義務化に賛成する人が増えている=2013年8月、和歌山県(益田暢子撮影)
育児の練習をする男性。男性の育児休業の義務化に賛成する人が増えている=2013年8月、和歌山県(益田暢子撮影)
 この二つのロスは女性の育休にも付随するものであり、キャリアロスを小さくするため女性においても早期の復職が望ましいと言われている。男性の育休期間は多くの場合短いため、女性と同等には扱えないが、仮に2週間や1カ月の休業であっても、そのタイミングで大事な仕事が入ってくる可能性はある。

 現行法は、こうした不利益と育児に専念できる利益の双方を勘案して、不利益の方が大きいと判断した場合は育休を取らない自由を労働者に認めている。その自由がなくなってしまうと、人によっては育休がベネフィットではなくペナルティーになってしまうおそれがある。