QRコード決済を提供する事業者は、自社の決済を利用してもらうことにより、いつ、どこで、どんな人が、何を買ったのかという情報を取得できるようになる。取得の際には、もちろんプライバシーへの配慮は必須だ。

 そうしたデータを多数集積し、人工知能(AI)技術などを活用して分析することで、企業のマーケティング活動に使ってもらったり、個人ローンなどの信用情報に活用したりする。こうした新たなビジネスを開拓することがサービス提供事業者の大きな目的となっている訳だ。

 セブン&アイ・ホールディングスは元々電子マネーサービスの「nanaco(ナナコ)」を提供していた。それでも、あえて7payを導入したのには、そうした顧客の購買データを用いた一層密なマーケティングをしたかったがためといえる。

 だが、データをビジネスに生かすには、膨大な量のデータを収集する必要がある。それゆえ、各社ともサービス提供開始を急ぎ、開始直後に大規模キャンペーンを打つことで、顧客の囲い込みに必死になっているわけだ。

 しかしながら、サービス提供を急ぐあまり、セキュリティー問題が生じて不正利用が多発したケースは、7payだけではない。ソフトバンク系の「PayPay(ペイペイ)」も、2018年末の大規模キャンペーンをきっかけとして、セキュリティー上のいくつかの問題から不正利用が多発し、大きな問題として取り沙汰されるに至っている。

 それにもかかわらず、7payで再び大規模な不正利用が起こってしまったのである。このような状況では、やはり自社のビジネスを優先し、サービス提供と顧客獲得を急ぐあまり、「セキュリティーをおろそかにした」と消費者に捉えられてもおかしくない。そして、そうしたトラブルが起きるにつれ、QRコード決済全体への信頼が大きく揺らぐことにもつながってくる。
2018年12月からスタートした「ペイペイ(PayPay)」だったが、20%還元キャンペーンの影響で決済が集中してサービスが一時停止したり、不正利用が多発した(早坂洋祐撮影)
2018年12月からスタートした「ペイペイ(PayPay)」だったが、20%還元キャンペーンの影響で決済が集中してサービスが一時停止したり、不正利用が多発した(早坂洋祐撮影)
 日本は現金決済への信頼が非常に強い国であり、それがキャッシュレス決済の普及を阻む大きな要因と言われている。そのキャッシュレス決済を普及するための切り札として注目されたQRコード決済で、こうしたトラブルが相次げばキャッシュレス決済の普及を一層遅らせることにもなりかねない。

 キャンペーン競争の過熱が続くQRコード決済だが、むしろ今後は信頼を高めるための取り組みが強く求められることとなりそうだ。