つまり、生物学的年齢と関係のない永遠の「少年らしさ」。それはまた、「雄=オトコ」といったセックスアピールとは対極の清廉潔白な無垢(むく)さともいえよう。これは女性だけの「宝塚歌劇団」の「清く正しく美しく」と通じる日本人独特の「美学」と考えられる。

 チャッキリスらの「シャーク団」がどこかマッチョなアメリカ人好みの若者たちだったのに対し、ジャニーズの「少年たち」はまさに対極的な美の体現者たちである。しかし、ジャニー氏は自らのポリシーを終生変えることはなかった。

 世界を席巻したK-POPがコンテンツの輸出先に適合したスタイルで成功を収めたのとはまったくスタンスが違う。韓国人歌手PSY(サイ)の「江南(カンナム)スタイル」はコミカルなダンスとウイットの効いたメッセージによって欧米で爆発的人気を博し、日本では「東方神起」の憎いまでの心配りの癒やしが女性たちを魅了した。それに対し、ジャニー氏は自らのスタイルが世界に通用するよう日々精進を怠らなかったのである。

 それは、氏が布教のため異教の地へと派遣された仏僧の家の出であることと無縁ではなかろう。あくまで教義をゆがめることなく、それを異文化の現場で伝えることは並大抵のことではない。時間をかけた地道な活動が必要とされる。

 そして、時は満ち、近年、マンガ、アニメといったコンテンツが世界中で人気を博し、「カワイイ」は世界基準の価値観となった。こうした変遷は、「オリンピック」と「万国博覧会」が再びそれぞれ日本の同じ都市で開催されることに象徴されよう。前回のイベントが戦後復興から日本が「欧米」の世界水準に追いついたことを内外に知らしめたのに対し、今回の開催はまさに「日本的なもの」が世界基準となったことを証明するものである。例えば、「和食」はフランス料理などと並んで世界遺産として世界中でもてはやされている。
ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川さんの死去を伝える街頭テレビ=2019年7月10日
ジャニーズ事務所社長のジャニー喜多川さんの死去を伝える街頭テレビ=2019年7月10日
 2011年、ギネス認定の際、必要に応じてジャニー氏は写真を公開した。裏方に徹し、自分の写真を決して公にしない人物として知られていたにもかかわらず、だ。確かにキャップをかぶりサングラス姿のその写真は余りに謎めいてはいるが、それはひとえに世界進出のためと言われている。ジャニー氏もまた、「少年たち」が世界に通用する日が近いことに気付かれていたのであろう。そこに至るまで半世紀もの時間が費やされたのだった。