上村由紀子(フリーライター)

 俳優ってつくづく因果な商売ですよね。なにがキツいって、演じている役柄がそのまま本人のイメージと重なってしまうこと。例えば現在、NHK-BSで再放送中の昭和の朝ドラ『おしん』。

 本放送中には、今で言うところの毒親キャラ=おしんの父、作造役の伊東四朗の自宅まで押しかけて抗議をするやからが現れたり、「史上最凶の姑(しゅうとめ)」役、高森和子に「佐賀のイメージが悪くなる」と抗議の電話が殺到したりと、現実と画面の中の区別がごっちゃになる視聴者が続出。それだけ俳優の演技が真に迫っていたということなのでしょうが、現実とフィクションの区別がつかなくなるってどんな生活してるんだ。まずはタフマン飲んで落ち着いていただきたい。

 まあでも、役のイメージが演者の好感度に影響するのも世の常といえば常。そういえば4月から6月にオンエアされた春ドラマでも、役によって「得した俳優」「損した俳優」がパッキリ分かれた気もします。まずは「得した俳優」から振り返ってみましょうか。

『わたし、定時で帰ります。』吉高由里子&向井理
 そのタイトルからお仕事コメディードラマでは?と思わせて、実は「働き方改革」や「ワークバランス」といった社会的テーマにも斬り込んだ『わた定』。これまでぶっ飛んだイメージも強かった吉高由里子が芯の強さをたたえながら、チームを柔らかくまとめる東山結衣役を好演し、オフィスでのファッションやメークもかわいいと女性からの好感度も急上昇。吉高さん、この後CM増えそうです。さらに昨年、同じくTBSの火曜10時枠で放送された『きみが心に棲みついた』で、主人公に執着する上司役を演じ「気持ち悪い」「怖い」と散々な評価を受けた向井理が『わた定』ではそのイメージを好反転。ワーカーホリックでありながら、さりげなく結衣をサポートし、イケメンモードとスタイルの良さを隠した無頓着キャラが逆に萌えを誘発するという現象を巻き起こし、SNSでも大きな話題を呼びました。

『集団左遷!!』香川照之
 完全に「働く中年男性」をメインターゲットに据えたTBSの日曜9時枠。銀行を舞台にした『集団左遷!!』で得した俳優といえば香川照之。『半沢直樹』や『新しい王様』で見せた、トムヤムクンの中にハバネロをブチ込んだかのようなアクの強い芝居ではなく、福山雅治演じる銀行員、片山洋を穏やかにサポートする真山徹役をストレートに演じて「ああ、香川さんって普通のキャラクターもできるんだ」と、視聴者に日本茶のような味わいを残してくれました。お茶の間の評価も上がったところで、この夏は安心して虫取りにいそしんでいただきたい。
俳優の香川照之=2014年2月、東京都新宿区(撮影・吉澤良太)
俳優の香川照之=2014年2月、東京都新宿区(撮影・吉澤良太)
『きのう何食べた?』内野聖陽
 テレビ東京系列の深夜ドラマということもあり、視聴率は3%台と振るわなかったものの「視聴熱」は常に高く、見逃し配信サイト「ネットもテレ東」において歴代最高のPV数を記録した『きのう何食べた?』。主役2人の原作再現性の高さも秀逸で、特にゲイの美容師ケンジ役、内野聖陽のかわいらしさやいじらしさは女子のハートを撃ち抜きました。大みそかにケンジがひとりでサッポロ一番を食べながら「ジャニーズカウントダウンライブ」を見てニヤニヤするシーンはもはや伝説。最終回のアドリブっぽいエビのくだりは…うん、とても生々しかったです…。野性味あふれる刑事から小指を立ててケーキを食べるキュートな男子まで完璧に演じきる内野聖陽。この作品でさらに「演技派」の冠に磨きをかけたのでは。