三浦瑠麗(国際政治学者)

 今回の参議院選挙は、夢のない、しかもダークな選挙でした。2013年に会員制交流サイト(SNS)での選挙戦が導入されてから、選挙期間中は党派ごとに全く分断された世界を生きていることが可視化されるようになりました。

 自民党が保守の王道を行く勝ち組的な選挙戦を展開しなかったことも特徴的でしたし、最大野党である立憲民主党も政権を全否定しました。政策をめぐる論争よりも、互いに対する全否定の方が際立ってしまったのは残念なことです。

 人々は自分が選んだ情報にのみ接し続けると、どんどん偏見(バイアス)が強まると言われています。インターネットの世界では、誰がどんな思想を持っているかがすぐ分かってしまうため、リアルな社会では経験しないような摩擦が多く生じがちです。

 それでも、無党派層が多い日本では、中間にいる人たちがたくさん存在しており、彼らはそのような選挙戦の雰囲気から取り残されています。結果、初めからバイアスのある人は一層バイアスがかかり、そうでない若年層の多くや無党派層はそのような党派性に接するとむしろ意識的に価値中立的になる傾向が感じられます。

 日本の高齢者はSNSやブログなどのインターネットに数多く接すると両極的な意見を持つようになりますが、若者だとむしろ中庸の政策志向に近づくという調査結果もあるのです。

 自民党が王道の選挙よりも「煽り」に振ったのはおそらく戦略でしょう。野党バッシングの方が票になると判断したということです。大衆化が進展し、いよいよ自民党の中でエリート主義が終わったのだともいえます。

 また、今回は政治団体、れいわ新選組が経済政策で、さらに左から立憲民主党を圧迫しました。これら他政党の戦略の結果、立憲民主党は左傾化していくと思われます。
2019年7月20日、東京・新宿での街頭演説で支持を訴える「れいわ新選組」代表の山本太郎参院議員=2019年7月20日夜、東京・新宿
2019年7月20日、東京・新宿での街頭演説で支持を訴える「れいわ新選組」代表の山本太郎参院議員
 先進国の中で、日本が稀に見る政治的安定を確保している理由は四つあります。