第一に、自民党が経済政策でどっかりと中道に位置していること。第二に、所得階層ではなく、憲法と日米安保条約をめぐる分断が投票行動を左右していること。第三に、小選挙区制度が導入されたこと、第四に、日本人がここしばらくの政治を経験してもはや「破壊」や「変化」を望んでいないように思われることです。

 先進国には、グローバリゼーションの結果としての中産階級の地盤沈下と、富裕層との格差拡大に対する強い反発が生じています。政府の政策選択肢にはもはや大きな幅が残されていません。

 また、冷戦が終結したことにより、冷戦下で出来上がった既存政党を軸とした政治的分断の効力が薄れつつあるということも指摘できます。かつてであれば、「社会主義対資本主義」「共産主義対民主主義」といった対立軸が有効でした。

 ですが、移民や難民の受け入れ数が論点となり、グローバル化への対応が問題となる昨今においては、格差やQOL(生活の質)、環境保護などをめぐる論点はもはや「左派」の専売特許ではなく、独自の伝統や文化の保護などをめぐる論点も、もはや「右派」の専売特許ではなくなったからです。

 既存の政党を分けてきた亀裂が、もはや有用ではなくなると、新勢力が台頭しやすくなります。欧州では多くの既存政党が力を喪っている現状が指摘されています。

 しかし、日本では事情が異なります。安保や憲法といった冷戦期から持ち越した対立がいまだにビビッドに存在しているがゆえに、経済階層をめぐる分断が先鋭化せず、既存政党の有効性が持続しているからです。

 人の移動を中心に十分なグローバル化がまだ進展していないという事情もありますし、戦後すぐに連合国軍総司令部(GHQ)が行った改革によって相当程度分配と経済の民主化が進んだことや、自民党がバラマキを行ってきたという歴史的経緯も影響しています。

 そのうえ、民主党政権が「失敗」と総括されてしまったことにより、国民の多くは「既存秩序の破壊」に希望を見いださなくなりました。また、小選挙区制度の下で、いったん野党を経験した自民党の求心力が高まったために、かつてのように自民党が分裂することによる政権交代も難しい状況です。
2019年7月16日、広島市内で街頭演説する立憲民主党の枝野代表
2019年7月16日、広島市内で街頭演説する立憲民主党の枝野代表
 それでも、多くの先進国と同じように、日本には閉塞(へいそく)感が蓄積していっている。この安定が永遠に続くわけではなく、閉塞感打破がどのような形でいつ起きるかは、なかなかコントロールしづらいということです。