また識者や政治家の多くは、国民投票と国政選挙を同時に行うべきとの意見を持っている。選挙費用が節約できる効果は論外としても、改憲に対する関心を高める効果を期待する向きは多い。しかしこれにも私は賛成できない。

 規制のあり方が根本的に異なる国民投票運動と選挙運動を同時に行うことは、現場を大混乱に陥れるからである。さらに根本的な問題は、政権選択を求める国政選挙と、基本的政策を問う国民投票を同時に行うことは、改憲に対する国民の意思表示をゆがめることになりかねないからである。

 なお昨年来、私は憲法改正国民投票法に関する超党派の議員連盟に参加しているが、その中心議題はテレビCM規制をどうするかという点である。私は、この議題を投票環境の改善を目的とした国民投票法の改正や、憲法改正議論にスムーズに入っていくための呼び水にしようとしたが、どうもこれが改憲議論の前提、あるいは枕となって立ちはだかってしまったのではないかと反省している。

 安倍総理の「憲法改正を早期に実現したい」との気持ちはよく分かるが、前のめりの発言をするたびに憲法議論が止まってしまうことを、これまで何度も経験して来た。自民党総裁としての発言なら問題はないのだが、総理大臣との人格的な切り離しができないという現実を、直視しなければならない。

 今後の憲法改正議論は、このたびの参院選の結果がどうあろうと、審査会の場で与野党間が冷静に議論することが重要である。理想を言えば野党の一部、とりわけ野党第一党が積極的に参画し、最後に同意できないとしても、ともに議論したという過程が、極めて重要である。
第21回公開憲法フォーラムの会場で上映された安倍晋三首相からのビデオメッセージ=2019年東京都千代田区(桐原正道撮影)
第21回公開憲法フォーラムの会場で上映された安倍晋三首相からのビデオメッセージ=2019年5月4日、東京都千代田区(桐原正道撮影)
 そのことが必ず、発議した後の国民投票運動に影響を与え、さらには国民投票の結果そのものにも影響を与えると思うからである。「急がば回れ」の精神を今こそ生かすべきではないか。これまで20年以上憲法改正議論に関与してきた私としても、静かな環境のもとで改正の中身の議論が盛んに行われるよう、最大限の努力をしていきたい。

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