一方、今後の安倍政権がこのまま順調に推移するかどうかは経済面の業績次第である。前述の通り、財政政策や景気対策についての評価は厳しい。

 例えば、アベノミクスを評価するかどうかを尋ねると、「評価しない」が「評価する」をわずかに上回っている。その背景には、景気について「悪い」が過半数を占め、「良い」は2割弱しかない。また、生活将来感について見ても「不安がある」が3分の2に達し、「不安がない」は1割余である。このため、景気が良くない東北地方で、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」問題が争点となった秋田だけでなく、岩手、宮城、山形でも自民党候補が負けている。

 つまり、2012年の政権奪還当初にアベノミクスを打ち上げ、経済などの生活争点で内閣支持率を維持した頃とは異なり、現在は対韓国問題や外交などの社会争点で支持率を維持している。このため、外交や政治指導力という安倍総理の長所を維持できるかどうかは参院選後に控えるトランプ米大統領との日米貿易交渉の結果や日韓関係の推移にかかっている。

 なお、今回、議席を伸ばしているのが立憲民主党と日本維新の会である。この内、立憲民主党については野党第一党として自民批判の受け皿になっていることや、国民民主党の不人気さ故、旧民進党支持者が国民民主党支持から立憲民主党にくら替えしたことも原因となっている。

 一方、日本維新の会は大阪の2議席獲得に加えて、関東東京の神奈川でも議席を得た。この背景については、世代によるイデオロギー軸の変化が原因ではないかと考えられる。かつて「保守vs革新」と言えば、「日米安全保障条約是か非か」や「在日米軍基地から米軍がベトナム戦争に出撃することの問題」などを通した軸として考えられ、極論すれば「タカ派vsハト派」と解釈する者もいた。しかし、都市部を席巻した革新自治体が衰退して以降、最近では「革新」という言葉自体を聞く機会が少なくなった。
参院選の投票が行われる=2019年7月21日、大阪市福島区の吉野投票所(前川純一郎撮影)
参院選の投票が行われる=2019年7月21日、大阪市福島区の吉野投票所(前川純一郎撮影)
 ここで有権者の政治意識を見ると、前述の通り、憲法改正や9条改正による自衛隊明記賛成が多いが、その一方で夫婦別姓については賛成が6割で反対を上回っており、原発再稼働についても反対が6割で賛成を上回っている。

 つまり、かつてのタカ派vsハト派という対立軸でみれば「改憲=夫婦別姓反対=原発再稼働賛成」vs「護憲=夫婦別姓賛成=再稼働反対」となるが、今の多数派は「改憲+夫婦別姓賛成+再稼働反対」となる。つまり、少なからぬ有権者は「保守vs革新」を「タカ派vsハト派」ではなく、現状維持か改革志向かという「保守vs進歩」軸で認識しているのではないか。

 そうした有権者にとって、日本維新の会は保守ではなく進歩になり、50代以上の有権者の認識とは異なっている。日本維新の会のベクトルについては賛否両論あるが、現状を変える提案をしているという印象を持つ有権者が増えている。このため、現在の政治に閉塞(へいそく)感をもつ一部の者が日本維新の会に投票したことになり、それとは反対のベクトルのれいわ新選組が2議席を得た理由でもある。

 こうしたイデオロギー軸の変化に他の野党が追い付いているのかが問題となる。冒頭の年金不足問題で指摘したように、政府与党を批判するだけで実現可能な代替案を示すことができなければ、若い有権者からは与党と同じ「現状維持=保守」に見られることになる。常に各党のベクトルに則した新しい制度改革案を提示していくことが、いずれの政党にも求められている。