篠原章(評論家・批評.COM主宰)

 沖縄で国政選挙や知事選挙など重要な選挙があるたびに、主要なメディアは「基地問題」が最大の争点であるとし、「辺野古埋め立てをめぐる国と県との対立」が大きく報道される。

 国とは自公政権であり、県とは「埋め立て」に反対するオール沖縄勢力だから、自公が推す候補者(今回の参院選では維新も相乗り)と、オール沖縄が推す候補者(今回の参院選では野党統一候補)との対決という構図が描かれる。右派左派問わず、年輩者ほどこうした対立の構図にこだわる傾向が強い。

 が、こうした構図の下での政治のあり方には「もううんざりだ」というのが率直な気持ちである。「基地問題は重要でない」と言いたいわけではない。必要以上に肥大化してしまった「沖縄の基地問題」が、沖縄にとって重要な他の問題を覆い尽くしてしまっているからだ。

 たしかに国と県との対立は深刻ではある。2015年以降、この対立は法廷に持ち込まれ、16年の最高裁判決では埋め立ての適法性が認められたが、その後も係争は収まる気配はなく、今回の参院選挙の期間中にも新たな訴訟が県によって提起されている。埋め立て予定区域に軟弱地盤が存在することもこの問題を錯綜させ、今後際限のない訴訟合戦が続く可能性がある。

 だが、沖縄の置かれている状況に踏み込んで、本当に深刻な問題は何かを見極めようとすると、基地問題にメディアで喧伝(けんでん)されるほどの重要性を見いだすことは難しくなってくる。

 最大の問題は経済だ。少々遠回りだが、例の「年金不足2000万円問題」に絡めて沖縄の現状を説明しよう。ここで問題としたいのは、平均的な日本国民がいったいどの程度の貯蓄(純貯蓄)を備えているかである。

 2014年の消費実態調査によれば、国民1世帯当たりの平均貯蓄額は1565万円だ。他方、1世帯当たりの平均負債額(借金)も見る必要がある。同じ調査によれば1世帯当たりの平均負債額は488万円である。貯蓄額と相殺すると1077万円という1世帯当たりの平均純貯蓄額を得る。
沖縄県名護市辺野古の沿岸部=2019年3月
沖縄県名護市辺野古の沿岸部=2019年3月
 問題視したいのは地域間のバラツキだ。都道府県別に見ると、世帯別の貯蓄額が最も大きいのは東京都であり、一番小さいのは沖縄県である。東京都の貯蓄額は1997万円で、借金を差し引いた純貯蓄額は1396万円、沖縄県の貯蓄額は575万円で純貯蓄額はわずか61万円である。これは東京都の純貯蓄額の4・4%にすぎない。むろん沖縄県の数値は全国最低である。

 純貯蓄額を「暮らしの糊代(のりしろ)」と見なすと、沖縄県の糊代の小ささは突出している。「2000万円問題」どころの騒ぎではない。糊代61万円では、ひとたび家計上の問題が起こった途端、あっというまに破綻してしまう。これは危機的な状況だ。暮らしという観点から見れば、基地問題の比ではない。